若手社員の能力開発とは、若手社員のパフォーマンスの向上や組織への定着を目的とした教育施策です。Off-JTとOJTを効果的に組み合わせることで、企業の目的に沿った若手社員の成長を実現します。
若手社員の能力開発が求められる背景
少子高齢化や人口減少社会を迎えて今後国内の若年労働力の減少が見込まれる中、企業活動を持続的に発展させていくために、企業は継続的に若手社員の採用を行い、育成・能力開発することが重要です。
一方で、若手社員の離職率は高く、厚生労働省が発表している「新規学卒就職者の学歴別就職後3年以内離職率の推移(令和2年度実施)」によると、平成7年以降、大学卒の社員の3年以内離職率は軒並み30%を超えています(ただし、リーマンショック直後の平成21年の大学卒の社員は除く)。
このような状況を背景に、企業は苦労して採用した若手社員を流出させることなく、貴重な若手社員を自社に定着させ、企業内で育成・能力開発を促す取り組みを行うことがますます重要となっています。
また、近年では若手社員の価値観の変化も指摘されており、若手社員の特徴をよく捉え切れない中で各種教育・育成施策を行うことにより、予期せぬ退職につながるケースも出ています。実際に、働き方の多様化やワークライフバランスの浸透などにより若手社員の労働観は変化しており、上司・管理職の年代とは明らかに異なっている価値観を持っているケースも珍しくありません。
そのため、従来の若手社員の育成・能力開発の施策を行うことでは対応できないケースがあり、各社において施策の内容をコンセプトから改めて見直す必要性も高まっています。
若手社員の育成課題と能力開発により期待される効果
1.適切な自己認識を持たせることにより、自己成長力を高める
自己認識力とは、一般的には「自身が見る自分と他者が見る自分がどれほど異なるかを自覚する力」と定義されます。特に若手社員は、学生時代までに他者の評価を気にする必要性に迫られることが少ないことから、適切な自己認識力を持てていないケースが多く見られます。
若手社員に自己認識力が欠けていると、自分が成長するためにどのような能力が足りていないかを自覚することができなかったり、他者から指摘されても受け入れることができなかったりと成長にブレーキがかかってしまいます。自己認識力とは、いわば若手社員の成長の土台となる能力と言えます。
そこで、自己認識力を高めるための手法として、アセスメントが有用です。
アセスメントでは、同じ環境下で一定のテストを実施するため客観的な評価が可能となり、社員に対する説得力も高くなります。また、社員が同じ状況下でテストを受けるということにより、通常の評価のように環境の違いなどを言い訳にすることができなくなり、一層自己認識力が高まるでしょう。
さらに、社内研修やOJTにより、社員へ仕事の取り組み状況を振り返らせ、適切な内省を促すといった対応も考えられます。
いずれの施策を用いたとしても、若手社員の自己認識力を高める取り組みを通じて、自己成長力を高めることが、若手社員の早期戦力化にとって重要となります。
2.キャリア意識を強化し、中長期的な思考に転換する
若手社員のキャリア意識を高めることは、中長期的な観点から成長を促す意味でも、社員の離職を防止するという意味でも重要です。特に最近の若手社員は、短期的なスキルの習得に価値を置く傾向があると言われており、分かりやすい技術・スキルが身につかないとすぐにモチベーションが低下してしまうといった状況に陥りがちです。
また、社内において、キャリアに関して考える機会がなかったり、キャリア・パスが不明瞭だったりすると、若手社員が将来に対して不安になり、退職につながるといったケースも考えられるでしょう。
そのため、若手社員のキャリア意識を育むための各種施策を行い、中長期的な思考に転換させるための施策が重要となります。施策の内容としては、上司とのキャリア面談の機会を設けることや、キャリアデザイン研修などを通じて、将来に対してのキャリアプランを立てさせるといった取り組みがあります。
3.企業の理念・戦略を理解させることにより、自律的な貢献を促す
若手社員は、通常自社の経営陣とは離れて仕事をする場合が多く、ともすれば自社の理念・戦略などの大きな方針を理解できていないといった状態に陥りがちです。
一方で、近年の若手社員は、上司から指示を受けたとしても、なぜそれをする必要があるのか腹落ちしなければ、なかなか動き出さないといった傾向が見られ、「言われたことを黙ってやれ」という指示も受け入れられづらくなっているのが現状です。
ただし、指示の背景にある考え方を一度理解すれば、若手社員が自律的に動き出す場合も多いため、いかに若手社員に対して自社の理念・戦略などの方針を理解させるのかといったことが重要になります。
その施策として挙げられるのは、ワークショップなどを通じて若手社員が自社の方針を理解させるような取り組みを行ったり、現場の上長にマネジメント研修を行ったりするような取り組みです。
クレイア・コンサルティングが提案する若手社員能力開発
1.課題認識に基づく必要な育成施策を提案
クレイア・コンサルティングでは、教育研修などの単発のソリューションに限定せずに、クライアントの若手社員に対する課題認識に基づき、必要な育成施策を提案することが可能です。
若手社員の育成課題を解決するためには、若手社員を対象としたトレーニングだけでなく、CDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)の構築やアセスメントの実施、自己啓発支援制度の整備など、様々な方策が考えられます。また、時には上長のマネジメント改善に打ち手を講じた方が有用な場合もあります。
このような様々な方策の中から、コンサルタントがクライアントの若手社員に対する課題を起点として、効果的な施策を提案します。
2.人事制度の深い理解に基づく育成施策の設計
能力開発・育成施策をより効果的に行うためには、各社の人事制度に対する理解のもと、人事制度の運用と紐づけて実施することが重要です。なぜならば、各社の人事制度には、キャリア・パスや昇格の考え方、コンピテンシーの設定などに、育成の方針が含まれているからです。
人事制度の設計・運用に精通したコンサルタントが、各社の人事制度の背景にある思想を読み解き、一貫した思想のもとで育成施策の設計を行います。
3.実践を意識したトレーニングコンテンツとOJTとの接合
若手社員の能力開発施策として、トレーニングを実施する場合、現場での実践を意識したコンテンツを開発します。
トレーニングの内容として例えば、理論を伝えるだけではなく、具体的なケースを題材として受講者同士ディスカッションを行い、そのうえで、講師からフィードバックするという流れで実施し、より学習効果を高められるような工夫をしています。その他に、ロールプレイング演習などを通じて、研修の中でスキルを実践的に身につけられるような方法も取り入れています。
さらに、「職場での実践」をサポートするために、トレーニングの最後に受講者が職場での自身の取組課題を設定し、それを現場で実践するような取り組みも行っています。トレーニングが終了してから一定期間経過後に受講者に職場での取組課題の実践度をレポートで提出させ、トレーニングを担当した講師が、受講者のその後の状況を確認し、今後の活躍に向けてアドバイスを行います。
若手社員の能力開発を実施する際の流れ
1.課題の整理
自社の若手社員の能力開発に関する課題を整理し、優先順位を設定します。
1-1.現状把握
- 現状の能力開発・育成施策の実施状況の棚卸し
- 最近の若手社員の傾向・特徴の整理
- 若手社員に求められる人材要件を姿勢・能力・求められる成果などから定義
1-2.課題整理
- 若手社員が現在の業務において直面している課題を想定し、整理
- 求められる人材要件とのキャップから、課題を整理
- 優先的に対処するべき課題を確認
2.基本設計
整理した課題に基づき、効果的な能力開発・人材育成施策を設計します。
課題に応じて、トレーニング設計や教育関連制度の整備、現場マネジメントへのサポートなどの方策を検討します。
3.コンテンツ開発
基本設計で検討した方策に基づき、各種コンテンツや関連制度の内容を具体化します。