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グループ人事の導入

SUMMARY

グループ人事とは、資本関係で結ばれた複数の会社から成る企業集団(グループ会社)において、人的資源を最大限に有効活用していくために、グループ会社間で横断して人事マネジメントを行う仕組みを整備し、全体最適の観点で運用していくことを指します。

グループ人事の要点は、各事業会社の独立性を保ちながら、グループとしての(統一的な)人事マネジメントがもつメリットを、適切なバランスで両立させることにあります。

グループ人事が生まれた背景

資本関係で結ばれた複数の会社から成る企業集団(グループ会社)においては、中核となる親会社を中心に、様々な連携が日常的に行われています。

各子会社は、それぞれの事業や機能に特化したマネジメントを行いつつ、経営資源の確保やバリューチェーンの各段階で精密な連携を行い、互いの組織の垣根を低くし、協力体制を構築することで、グループ会社全体としての競争優位要因を築いていきます。

人と組織に関わる領域においても同様です。人的資源の確保や、人脈を生かした組織間連携など、グループ会社間で協力し合うことが有効な場面は数多く存在します。

しかし、現実は「各子会社の独立性(自律性)」と「統一的なマネジメント」の間に、相容れない命題が常につきまといます。

よくある失敗例は以下のようなケースです。

  • 会社を合併したことで、人的資源の確保や組織間の連携は、一つの会社の中で集中的にコントロールが可能になった。
  • 半面、各子会社の独立性(自律性)は失われ、事業・機能に適したマネジメント(人件費水準のコントロールなどを含む)は困難になった。

こうした状況を回避するには、グループ会社間の垣根を低くし、重要な部分について一体運営をしていくことが、求められます。

人事戦略として重要さを増すグループ人事

事業構造やバリューチェーンの改革期には、M&Aなどによってグループ会社の構成自体が大きく様変わりしていきます。同時に、事業特性や事業戦略、あるいはバリューチェーンの特性によって、グループ人事を導入して共通化すべき範囲もダイナミックに変化していくことが求められます。

また、将来の事業ポートフォリオの変化を見据えた場合、行き過ぎたグループ人事は、機動的な事業ポートフォリオの入れ替えの障害となる可能性もあります。

連結会計が導入される以前は、子会社は、親会社の損益計算書から切り離された「部門」として運営されている場合が多く見られました。しかし、連結会計導入後は、各子会社がより自立してグループ連結業績に貢献することが求められるようになりました。

親会社を中心とした企業集団の全体最適と、各子会社の独立性(自律性)の維持強化を、人的資源の側面で如何にして両立させ、グループ会社全体の価値向上に繋げていくのか、という難問に立ち向かう上で、グループ人事は極めて重要な人事戦略となります。

グループ人事の機能とメリット

下図は、「人材フロー」「処遇管理」「人材育成」における、事業別人事とグループ人事の機能について、まとめたものになります。それぞれ対照的な内容となっています。

事業別人事とグループ人事

次にグループ人事の機能とメリットにはどのようなものがあるのかを説明します。

人的資源の有効活用

グループ人事の最大のメリットは、グループ会社間で人的資源を共有し、最大限に有効活用できるようになることです。

一般的に、親会社から子会社に経営幹部を出向で送り込み、組織内のマネジメントや会社間連携の強化を図るケースが多くみられます。規模の大きい親会社の方が、採用競争力や教育体制を高めやすく、より幅広い視野で総合的な人材(経営人材、ゼネラルマネージャー)を育成しやすい環境にあるためです。

【グループ経営幹部の選抜・育成】

グループ経営幹部の選抜・育成

このような場合、グループ会社間で人事のプラットフォーム(例えば人事評価制度や人材データベースなど)が共通化されていれば、出向してきた経営幹部は、使い慣れたマネジメントシステムを有効に活用して、グループ会社の人材を掌握し、活かしていくことができるでしょう。

【人事情報の共有化と活用(人材フロー)】

人事情報の共有化と活用(人材フロー)

また、グループ会社から有能な人材を発掘していくこと、グループ会社間で人材の過不足を調整して余計な採用やアウトフローを抑制すること、などもグループ会社全体の人的資源の最適化に大きく役立ちます。

労務リスクのコントロール

昨今は、労働時間管理や同一労働同一賃金など、適切な労務管理を行った場合のリスク(従業員の損耗リスク、レピュテーションリスク)が大きくなっています。また、70歳までの雇用義務(現時点では努力義務ですが、法的義務化が想定されます)など、社会環境に応じた労働関連法規の改正が随時行われていきます。

一般的に、親会社よりも規模で劣る子会社では、人事担当者の配置も限定的です。法改正対応や労務管理リスクのコントロールにまで即座に対応できないケースも少なくありません。しかし、子会社の労務リスクを放置したまま、いざリスクが顕在化した際は、当該子会社だけでなく、親会社を含めたグループ会社全体が影響を受けることになります。

人事プラットフォーム(特に就業規則などの法令が関わる仕組み)をグループ会社で統一化することで、親会社の改定事項を速やかに子会社に波及させることができます。また、子会社の限られた人的資源でもリスクの顕在化を未然に防止することができます。

人的資源管理の効率化

労働時間管理や給与計算、人事評価の運用、タレントマネジメントなど、人事マネジメントの運用にはシステムが欠かせません。人的資源管理に伴う運用負荷を軽減させ、職場の限られた人的資源を事業活動に集中できるようにするには、人事システムの有効活用に加え、継続的な機能アップデートが重要になります。

一般的に、親会社よりも規模が劣る子会社では、独立した人事システムを準備することが難しく、費用対効果も低くなります。主要な人事制度の構造を統一することで、グループ会社共通の人事システムを活用しやすくなり、各子会社での人事マネジメントの質と効率が向上します。

ただし、人事システムはあくまでもツールのひとつです。各子会社の事業や機能の特性を踏まえた人事マネジメントの余地を確実に確保しておかなければ、事務効率は向上しても、事業や機能の競争力強化には繋がりません。

特に、人的資源管理の効率化を追求する場合には、各子会社がもつ独自性をどのように確保するのか、という見極めが重要になります。

グループ会社間での一体感の強化

バリューチェーンにおけるきめ細やかな連携を、グループ会社間で分担している場合は、所属会社が異なる社員同士の連携の在り方が重要なテーマとなります。ときに、子会社の垣根を超えた一体感を醸成していくことも求められます。

意識面での一体感だけでなく、活発な人事交流も行われるようになるため、人事プラットフォームが共通化されていることのメリットは大きくなります。

クレイア・コンサルティングが提供するグループ人事の特長

当社はこれまで、大規模な事業構造改革期の人事コンサルティング、あるいはM&Aやグループ再編といった組織変革を成功に導くためのコンサルティング活動を通じ、多くの実績を積み重ねてきました。

特にグループ人事は、効果と副作用の両面が想定される人事戦略のひとつと言えます。

当社は、企業集団の歴史や経緯、各子会社の特性や人員構成などの人的資源の状況、今後のグループ事業戦略の展開など、様々な観点から検証を行い、効果を最大化しつつ副作用を最小化する「現実的な方策」を考案します。

グループ事業戦略に直結した人事マネジメントのあり方を提言

企業集団としての競争優位要因を、人的資源によって創出していくためのグループ全体の人事マネジメント(人材フローマネジメント、人材育成マネジメント、人件費マネジメント)のあり方を、総合的な観点でご提案します。

グループ全体最適の観点と、各子会社の独立性(自律性)を活かす観点から、グループ人事のあるべき姿を総合的に検討するとともに、将来の事業ポートフォリオとグループ会社構成の変化も見据えた提言を行います。

効果の最大化と副作用の最小化

グループ人事の推進にあたっては、グループ全体最適と各子会社の独立性(自律性)のトレードオフに関する考察と対策創出が必要となります。グループ人事を推進することで得られる効果と、付随して各子会社で発生する副作用を幅広い視点で想定・検証しながら、実効性の高い方策を提言します。

グループ人事部と各社経営陣を仲介

グループ人事を推進する立場であるグループ人事部(親会社人事部)と、それぞれ独自の問題意識やマネジメントスタイルを持つ各子会社の経営陣との間で、建設的な議論と解決策の選択ができるように導きます。

M&Aやグループ再編、事業分社などの組織変革のコンサルティング経験と、様々な状況における人事処遇制度改革の経験を活かして、グループ事業戦略の実行・実現の観点と、各子会社固有の人材マネジメントの状況の両面から施策の効果と副作用を冷静に検証し、客観的な立場で現実的な対策を提言します。

グループ人事を導入する際の流れ

1.グループ人事を行う目的の明確化

はじめに、グループ人事を行って「実現したい効果(あるいは解決したい問題)」を明確にします。

同時に、グループ全体の事業戦略と各子会社の事業特性や人材マネジメントの現状の観点から、「実現したい効果」の重要度と優先順位を検証します。

2.各社の人事制度・人事マネジメントの検証

「実現したい効果」を達成するために、各子会社の人事制度や人事マネジメントをどの程度変更する必要があるのか、検証します。制度を大きく変更することが不可避の場合もあれば、一部の設計変更や運用変更で対応できる場合もあります。その状況は子会社毎に異なります。

子会社毎の人事制度・人事マネジメントの状況を総合的に調査することで、グループ人事を推進していく上での留意点、障害、優先順位、および「維持すべき各子会社の独立性」を具体的に把握・整理し、実効性と実行性の高いグループ人事導入戦略を検討します。

3.グループ人事の制度設計

「実現したい効果」を達成するための人事制度を必要な範囲で設計するとともに、全社の人事制度との連結方法も設計します。

特に、評価制度や報酬制度など、人事制度の一部分を会社別とすることが必要な場合は、グループ共通分とのすみ分けや、グループ会社間で異動があった場合の対応方法などについて、具体的に検討・定義をしていく必要があります。

担当コンサルタントがグループ人事制度の範囲と内容に応じて生じうる副作用を想定し、効果の最大化と副作用の最小化につながる施策を提言します。

4.移行戦略の設計

グループ人事を導入する対象会社の人事制度と人事マネジメントの状況は、それぞれ異なります。

各人事諸制度の変更によって生じる想定されるリスク(法的リスク・人件費増大リスク・モチベーションリスク・運用リスク)を、導入対象となる子会社毎に整理します。また、移行戦略も各社別に検討します。

場合によっては、導入対象のグループ会社を「第1グループ」「第2グループ」などに分け、リスクの顕在化を回避しながら、グループ会社の経営陣と社員が「グループ人事制度が導入されることのメリット」を実感できるような導入のステップや方法を検討します。

5.コミュニケーションプランの設計

グループ人事を導入すると、各子会社の独立性(自律性)が薄まり、自社・自組織の状況よりも、親会社の都合が優先されるように感じる経営陣・社員も出てきます。

そのため、導入する目的とメリット、および各子会社の独自性を活かす部分の双方をわかりやすく解説し、前向きな理解を得ていくことが求められます。

また、グループ人事の必要性、評価と処遇に与える影響、今後のキャリアに与える影響など、社員の立場に立った説明シナリオや想定Q&Aの準備を行います。

AUTHOR
針生 俊成
針生 俊成 (はりゅう としなり)

クレイア・コンサルティング株式会社 執行役員COO マネージングディレクター
筑波大学第二学群人間学類卒業

トーマツコンサルティング、アーサーアンダーセンを経てクレイア・コンサルティングの立ち上げに参画。
幅広い業種における統合的人事制度改革、コンピテンシー設計、人材アセスメント、人材育成、意識改革、ES(従業員満足度)向上等、多数の人事コンサルティングプロジェクトに従事。合併や分社等の組織再編に伴う人事制度改革、高度専門職の人事制度設計やコンピテンシー設計、ブランドマネジメントと連動した人材マネジメントのコンサルティング等の実績も豊富。

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