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M&A人事(M&Aに伴う人事統合)

SUMMARY

M&A人事(M&Aに伴う人事統合)とは、組織再編時に、異なる人事諸制度をひとつに合わせることです。

M&A実施後は、同じ職場や同じ業務に従事している社員ならば、出身組織に関わらず、処遇や勤務ルールが統一されている状態が最も望ましいことは言うまでもありません。しかし、実態は大きく異なります。

M&A実施前の各社の人事制度は、各社の人事理念、長期的視点での昇格・昇給モデル、労使関係や過去の労使交渉等の経緯、組織風土、人員構成などを前提に構築されているのが常です。人事制度を表面的に統合するだけでは様々な矛盾やリスクが表面化し、社員に大きな混乱や不安を与える可能性があります。

特に、将来のポスト不足などが想定される場合、多くの社員が不安を抱くことから、拙速な人事制度の統合によって更に不安を増長させることがないように慎重な検討が必要です。

また、法的リスク(不利益変更)を回避しつつ、人件費が上昇しないように人事制度を統合する事も困難を伴います。特に、現状の処遇からの移行(処遇変更)方法について、知恵を絞らなければなりません。

人事統合に際しては、M&A実施前の人事制度の仕組みと人事運用の実態、及びその背景を徹底的に分析し、人事統合(変更)のリスクを網羅的に考察しながら、人事統合の範囲やステップ、あるいは社員への説明方法などについて慎重に検討する必要があります。

M&A・人事制度統合時のリスク構造

M&A人事(M&Aに伴う人事統合)の必要性

M&Aを実施する場合に「人事制度の統合は必須であるのか?」と問われれば、必須ではありません。極端なことを言えば、実施後も、人事制度は旧2社の制度を継続して運用することは可能です。また、合併までの期日が短く、現実的に2つの人事制度を併存させたままM&Aの実施を迎えざるを得ない場合もあります。 人事統合の必要性については、「M&A実施後に人事制度を統合しないとどのような不都合(リスク)があるのか?」ということを考えてみるとわかりやすく理解できるでしょう。


実施後に人事制度を統合しないと発生が予想される不都合(リスク)には、次のようなものがあります。

M&A実施後に人事制度が統合されない場合に発生するリスク

  1. 同じ仕事でも処遇水準が異なることで、不公平感が発生する。 (例え総合的な処遇水準が同程度であっても、お互いが「相手よりも水準が低い」という部分に着目して、お互いに被害者感情や不満を抱きやすい)
  2. 旧組織をまたいだ人材移動(人事交流)を行う際に、軋轢や不信感が生じやすい
  3. 統合新会社で採用した社員を、どちらの人事制度で処遇すべきかわからない
  4. 2つの人事制度を併存させることで、人事制度の運用に関わる業務が複雑かつ非効率になる

このような不都合(リスク)を放置しておくと、人材配置の制約やモチベーションダウンの要因となり、最終的にはM&Aの効果が実現できない、という可能性もあります。

私たちは、M&Aに伴う人事統合の必要性は、あくまでもM&Aの目的達成の観点から判断されるべきであると考えます。M&Aの目的や背景によっては、人事制度の完全統合が必須である場合もあれば、部分的な統合でも目的を達成できる場合もあります。

人事制度統合の考え方

M&Aで人事統合を行うメリット

人事統合を行う際のメリットは、人事制度を統合しない場合の不都合(リスク)を回避できる、ということだけではありません。M&A実施後の組織の方向性や戦略を踏まえて、一貫性のある人事統合を行う事には、次のような利点があります。

  1. 組織の方向性や戦略の実現に向けた意識統合・モチベーション向上を図ることができる
  2. 旧組織の枠を超えて、柔軟に人材再配置(人事交流)ができる
  3. 人事管理を一本化することで、人事の運用業務を効率化でき、戦略的業務に注力できる

1. 組織の方向性や戦略の実現に向けた意識統合・モチベーション向上を図ることができる

組織の統合・合併時には、社員は自分の処遇や将来キャリアについて大きな関心(多くの場合は不安)を抱きます。まずは不安を解消することが重要ですが、それにとどまらず、M&A実施後の新組織のビジョンや方向性に合致した人事制度(特に等級・評価・給与などのキャリアアップに関わる制度)を構築・導入することで、キャリアアップに向けた努力(人材育成や自己啓発)を新組織の方向性と合致させることができます。

例えば、業界の市場縮小と競争環境の激化を背景にM&Aを実施した企業では、人事評価や昇格基準において、それまでの「成果達成に向けた頑張り度合い」や「成果の量」を重視する評価基準から、「差別的競争優位の創出」や「生産性の向上」など、成果の質をより重視した評価基準に切替え、意識転換を図っています。このように、M&Aを期に評価や昇格の基準を刷新することで、M&A実施後の新組織が目指す方向性をより具体的に、強力に、社員に浸透させることが可能になります。

統合新会社イメージ

2. 旧組織の枠を超えて、柔軟に人材再配置(人事交流)ができる

処遇が異なる旧組織間で人事交流を行うと、当然ながら「同じ仕事をしているのに処遇が異なる」という不公平感や心理的な壁が発生します。人事制度を統合すれば、このような問題の発生を回避できます。

それだけでなく、上司は出身組織が異なる部下に対して、同じ目線でマネジメントと評価を行う事ができるようになります(人事評価や処遇への反映基準が異なる場合、上司は出身組織が異なる部下を評価するために2つの制度を理解し、使い分けることができなければなりません)。

上司の日々のマネジメントが、出身組織に関わらず公平に行われる環境が整えば、出身会社の枠を超えた人材交流がスムーズに進みます。これは、旧組織間の社員同士の交流によるシナジー効果を実現できるだけでなく、柔軟な人材再配置によって組織全体の人的生産性を向上させることができ、雇用を維持しながら人件費効率を高めることにも繋がります。

M&A時人事制度統合実施未実施リスクの差

3. 人事管理を一本化することで、人事の運用業務を効率化でき、戦略的業務に注力できる

M&A実施時に人事諸制度を統合することで、人事の運用業務(給与計算や労務管理など)について、より多くの社員の管理を少数の人事部員で効率的に行えるようになります。しかしながら、単純に人事諸制度を統合するだけで、諸制度間に一貫性や整合性がない場合には、人事の運用業務の効率化が実現できない場合があります。諸制度間に一貫性や整合性がない場合、様々な想定外の事象が発生したり、社員が諸制度の趣旨や内容を正しく理解していないために説明や事後対応に追われるような事態が発生しやすくなるためです。

人事統合を行わなければならない状況は、等級・評価・報酬などの基幹人事制度だけにとどまらず、あらゆる人事諸制度を総合的に統合していく必要があり、人事諸制度について総合的に見直し、一貫性のある考え方で再構築を行う好機でもあります。この機会に、一貫性のある人事諸制度を整備することで、その後の人事運用業務を効率化でき、貴重な人材(人事部員)をより戦略的な業務に振り向けていくことが可能になります。

クレイア・コンサルティングが提供する「M&A人事」支援の特長

【特長】

  1. 統合新会社に最適な新人事制度をゼロベースで構築し、定着までサポート
  2. 様々な人事リスクを想定した着実な人事統合プロセスを提案

1. 統合新会社に最適な新人事制度をゼロベースで構築し、定着までサポート

M&Aのように、組織全体が変革期にある中では、様々なマネジメントシステム(組織構造と役職階層、管理会計と業績管理、情報システムなど)が同時並行で変革・変更されていきます。このような状況で人事制度についても抜本的な変革を行っていくことは容易ではありません。

何故なら、人事諸制度は、その他の様々なマネジメントシステムとの整合性がある形で構築されなければ適切に機能しないのですが、これらのマネジメントシステムがすべて「検討中(人事諸制度検討の前提条件が確定していない)」という状況で人事諸制度の構築を行わなければならないからです。

このような状況では、様々なマネジメントシステムの検討を担当している関係者と有機的に連動・協働しながら、臨機応変に人事制諸制度の検討・構築を進めていくことが求められます。組織のマネジメントシステム全体が変革の真っ只中にある状況で、あるべき人事制度を遅滞なく構築し導入していくためには、人事諸制度の構築経験だけでなく、組織変革や組織統合の経験とノウハウが不可欠です。

クレイア・コンサルティングのコンサルタントは、業種・業態・戦略に応じたオリジナル人事制度の設計・導入・定着の経験に加えて、企業統合や組織変革のコンサルティングも数多く経験しています。その為、M&Aという組織の混乱や社員の不安が生じやすい状況でも、マネジメントシステム構築に関わる幅広い関係者と効果的に連携しながら、ゼロベースでの人事制度構築を推進していくことができるノウハウを蓄積しています。 

推奨するM&Aを伴う人事制度統合イメージ図

2. 様々な人事リスクを想定した着実な人事統合プロセスを提案

人事諸制度の統合には、様々なリスクが伴います。主要なリスクは「人件費増大リスク」「法的リスク」「モチベーションリスク」「運用リスク」に分けて考えることができます。

これらの人事リスクは、互いにトレードオフの関係にあるものもあり、人事リスクを完全に回避することは不可能です。このような多様なリスクが存在している中で、社員に不安や混乱を与えることなく人事諸制度の統合を完了させるためには、発生するリスクを事前に想定する洞察力と、リスクを回避・軽減するための現実的な方策リスト(ノウハウ)が必要です。

クレイア・コンサルティングでは、数多くの組織統合および人事統合のコンサルティング事例を積み重ねており、様々なパターンの統合事例に照らし合わせて、人事リスクを的確に把握・想定することができます。また、リスク回避策またはリスク軽減策についても多様なパターンを熟知しており、複雑な人事リスクを的確にコントロールしながら、M&Aを成功に導くプロセスを構築することができます。特に、人事制度の設計だけでなく、導入・定着に至るまでのコンサルティングを数多く手掛けており、コミュニケーションプラン構築(社員説明など)、弁護士と連携した法的リスク対応、評価分析と調整コントロール、人材アセスメントなど、M&A後の新人事諸制度を確実に導入・定着させるためのノウハウを数多く有しています。

特に、人事制度の設計だけでなく、導入・定着に至るまでのコンサルティングを数多く手掛けており、コミュニケーションプラン構築(社員説明など)、弁護士と連携した法的リスク対応、評価分析と調整コントロール、人材アセスメントなど、M&A後の新人事諸制度を確実に導入・定着させるためのノウハウを数多く有しています。

M&A人事統合リスクを回避するステップ

M&A人事(M&Aに伴う人事統合)の流れ

  1. 人事統合シナリオの構築
  2. グランドデザインの設計
  3. 等級制度の統合
  4. 評価制度の統合
  5. 報酬制度の統合
  6. 退職金・年金制度の統合
  7. 労務管理の統合
  8. 制度移行手続きの検討
  9. コミュニケーションプラン

1. 人事統合シナリオの構築

このステップでは、統合対象の各社の人事の現状を詳細に把握・分析した上で、人事制度をどのように統合するのか、大きな方針を決定します。

M&Aに伴う人事統合の基本的なシナリオは下記の4つです。

  • 人事制度を統合しない(旧組織の人事制度を併存させる)

  • 統合対象のうちの1社の人事制度に合わせる

  • 統合対象の各社の人事制度を組み合わせる

  • 統合後新組織の方向性に合わせて、新しい人事制度を構築する

2. グランドデザインの設計

ここから先のステップは、「④統合後新組織の方向性に合わせて、新しい人事制度を構築する」場合を想定した流れを解説します。

このステップでは、M&A後新組織の方向性を踏まえて、新人事制度の全体像を構築します。ここで重要なことは、人事諸制度全体を一貫した考え方に基づいて整合性ある形で構築することです。

つまり、等級・評価・給与・賞与といった基幹人事制度だけでなく、人材フローの仕組み(採用・異動)、退職金・年金や福利厚生、労務管理制度、教育体系などについても総合的に検討しておくことが重要です。

【統合後新会社の人事マネジメント方針】

グランドデザインの設計と統合後のマネジメント方針

【統合後新会社の新人事制度要件】

新人事制度の要件事例

【基幹人事制度の全体構造】

基幹人事制度の全体構造

3. 等級制度の統合

このステップでは、新しい等級制度を構築し、M&A前の各組織の等級(旧等級)から新等級への移行方法を検討します。新しい等級制度は、役割等級や能力等級など、M&A後組織の方向性に沿って構築することになります。

人事統合において課題となるのは、旧等級から、新等級への切り替え(等級移行)ルールの設定です。等級移行の考え方は、大きく分けて下記の3パターンがあります。

  • 旧等級をご破算にして、ゼロベースで新等級を決定する

  • 旧等級と新等級の対応表を設定し、移行する

  • 旧等級をベースとしながらも、境界線にある対象者のみ審査を行い、新等級を判断する

①のパターンは最も望ましいように思われますが、等級移行に相当の労力がかかること、およびM&A後間もない組織で目線を合わせて新等級を決定することが非常に難しいことから、現実的にはなかなか難しい方法です。

②のパターンは、対応表を合理的に設定することができれば、最もスムーズに等級移行が可能です。ただし、合理的な対応表を設定するためには、旧組織の等級定義と昇格運用について詳細に分析を行い、実態を踏まえた対応関係を設定することが重要です。

例えば、同じ「課長級」の等級であっても、厳格な昇格運用を行ってきた会社と、自動昇格に近い運用を行ってきた会社では、実力値が大きく異なる可能性があります。②のパターンを採用する場合には、等級定義や規程だけでなく、実態をよく把握・分析しておかなければ、公正な等級移行にはなりません。

③のパターンは、①と②の組合せと考えられます。

一定の基準を設定し(例えば「課長級」の在級年数が5年以上で直近3年の評価がA評価以上、など)、その基準に該当する対象者のみ、新等級の定義に照らし合わせて審査(試験、レポート、面接、など)を行います。このパターンは、より現実的な労力できめ細やかな等級移行が可能です。

等級移行の考え方の例

4. 評価制度の統合

このステップでは、新しい評価制度を構築し、M&A前の各組織の評価制度(評価基準等)との違いを整理して、評価者の意識改革の方法を検討します。評価基準や評価プロセスだけでなく、評価調整の考え方や評価フィードバックなど運用の考え方についても、M&A前の組織毎に考え方が異なっていることが通常です。

つまり、異なる評価基準や評価プロセスに慣れている評価者の目線や考え方をどうやって統合していくか、ということを検討することがこのステップで最も重要なことです。

例えば、新しい評価制度で「成果評価」という仕組みを構築しても、「成果」の意味合いがM&A前の組織毎に異なる場合(例えば旧A社では成果とは結果のみを意味し、旧B社では成果にはプロセスも含まれると定義されている、等)、このままでは適切な評価が行われない可能性があります。

新しい評価制度を構築したら、評価の仕組みと用語定義について、M&A前の各社の仕組み・用語定義と比較整理する一覧表をつくり、M&A前の各組織の評価者が、それぞれ「何が変わるのか」を具体的に理解できるように提示していくことが効果的です。

評価制度の統合イメージ図

5. 報酬制度の統合

このステップでは、新報酬体系(給与・賞与の体系)を構築し、各社員の給与・賞与を新報酬テーブルに載せ替えます。そして、各社員の給与・賞与が新報酬テーブルの枠内に収まらない(新報酬テーブルよりも高い・低い)場合に、その差額をどのように処理するかを検討します。

各社員の給与・賞与が報酬テーブルよりも低い場合には、その差額をM&A時に埋める(給与を上げる)のか、段階的に埋めていく(例えば昇給額を2倍にする、など)のかを検討します。

各社員の給与・賞与が新報酬テーブルよりも高い場合は、その差額を調整給として支給するか、調整給を段階的に減らしていくべきか、等を検討します。(給与は調整給の対象とし、賞与は調整給の対象としない、など多様なパターンが想定されます)

このような差額処理の方法検討にあたっては、M&A前の各組織での給与・賞与決定の過程をよく把握しておくことが重要です。特に、調整給の検討を行う場合には、不利益変更に該当する場合ですので、法的リスクの観点から慎重に対応を検討する必要があります。

■ 処遇水準が下がる場合の対応(選択肢)
メリットデメリット
【案1】
現行の給与・賞与を一切保証しない
移行原資が発生しない×社員の生活に甚大な影響を与える可能性がある
×係争リスクが高い
【案2】
前年の年収実績を保証する
社員の生活への影響、人件費原資の変動は最も少ない×仕事と処遇のミスマッチが放置され、新制度に対する社員の期待・信頼が低下する可能性がある
×新会社の評価基準が浸透しない(高い評価を取るインセンティブが働かない)
【案3】
標準年収(標準評価の場合、前年の標準年収)を保証する
移行は容易×賞与保証の前例になる
社員への説明を行いやすい×旧会社と新会社の評価基準は異なるため、評価結果を厳密に比較できない
【案4】
月例給与を保証する
月例給与は法的に保護される生活の基盤であり、措置の合理性が高い×月例給は下がらなくても、年収が大幅に減少する人が相当程度発生する場合には、個別説明とモチベーションダウンへの配慮が必要
新会社の評価基準が浸透しやすい

【月例給引き下げの方法】

月例給引き下げの方法

6. 退職金・年金制度の統合

退職金・年金制度統合とは、合併やグループ再編などのM&A・組織再編時に、二社以上の企業の退職給付制度(退職一時金制度および企業年金制度)を統合する人事マネジメント手法です。特に合併時には、企業年金制度を完全に統合する必要があります(企業年金制度は原則として1社1制度)。

退職給付制度の統合時には、「支給水準」「支給カーブ」「積立方法」の3つの要素をすべて統合する必要がありますが、その統合に際しては法律や年金数理計算などが関係するために高度な技術が求められます。

退職給付制度統合3つの要素

7. 労務管理の統合

このステップでは、労働時間・休日・休暇などの勤務ルールの一本化を図ります。この労務管理の統合に際しては、規程(ルール)の統合にとどまらず、各職場の運用実態の統合を図っていくことが極めて重要です。

例えば、残業時間の承認プロセスや有給休暇の取りやすさが職場(あるいは統合前の各組織)毎に異なると、実態として労務管理が統合されたことにはなりません。このように実態に差がある状態が放置されると、法的リスク(サービス残業問題など)やモチベーションリスク(職場間の不公平感、異動拒否など)を高めることになります。

労務管理の統合

8. 制度移行手続きの検討

このプロセスでは、どのような手続きとスケジュールで人事制度の変更・統合を行っていくかを検討します。

人事制度変更の手続きとして一般的なのは、「就業規則の変更」手続きに沿って行う方法です。この場合、社員の過半数が所属する労働組合、または社員代表から新人事制度に対する意見聴取を行い、その意見を添付して新しい就業規則を労基署に提出します。

■不利益変更の合理性判断基準
合理性の判断基準アセスメント人事評価
1.労働条件の変更の必要性経営の視点から、不利益を含む改定を実施せざるを得ない明確な事態の提示が可能か
  • 過度の不利益のある施策(給与減額等)を実施する際に、赤字等といった実施の必要性に関する根拠が乏しい場合
  • 不利益変更が、事前の説明なしに実施された場合
  • 月給の減額幅が10%(減給制裁の上限をはるかに超える数字
2.労働組合等との交渉の経緯他の労働組合、または他の従業員の反応適切な回数、タイミングで、労働組合・従業員への説明の機会を持っているか
3.労働者の受ける不利益の程度金額等の実質的に生じる不利益の程度はどの程度か
4.同種事項に関するわが国社会における一般的状況他社に比べて著しく優しいといったことがなく、一般的に行われているレベルか
5.代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況不利益の程度が大きくても、それに見合った十分な代替措置や激変緩和措置があるか
6.変更後の内容の相当性特定グループのみが不利益を被るような、不公平性、恣意性はないか

9. コミュニケーションプラン

このステップでは、新人事制度を社員に前向きに理解してもらえるようなコミュニケーションプランの基本スケジュールを検討します。特に人事統合の場面では、社員の出身組織によって新人事制度に対する受け止め方や理解度が大きく異なることが想定されます。

M&A後の意識統一と一体感を考えると、新人事制度について統一的な説明を行っていくことも重要ですが、理解・浸透を着実に図っていくという観点からは、出身組織別の説明会や説明資料を準備した方が効果的です。

例えば、ある企業統合の場面では、人事制度ハンドブック(説明資料)を2部構成とし、第1部は全社員共通の内容(新人事制度の解説)、第2部は出身会社毎に異なる内容(旧人事制度との違いの解説)として作成・配布するなどの工夫を行っています。

コミュニケーションプラン
AUTHOR
桐ヶ谷 優
桐ヶ谷 優 (きりがや まさる)

クレイア・コンサルティング株式会社 執行役員COO マネージングディレクター
慶應義塾大学文学部卒業

大手人材派遣会社および外資系コンピューターメーカーの人事部門にて、人材開発や人事制度設計に携わる。その後、国内系人事コンサルティング会社を経て現職。
主に人事制度改革を中心にコンサルティングを行う。最近では、企業再編に伴う人事制度改革や組織改革に従事。また、制度設計だけでなく、人事制度導入局面でのコンサルティング経験も豊富に持つ。

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