当社のコンサルティング事例をご紹介します。
事例1.M&Aに伴う人事インテグレーション支援
課題
ある素材製品を扱う専門商社であるA社とB社は、業界の商流において一部重複があるものの、大部分が異なる領域で事業を運営しており、両社の事業は相互に補完関係にありました。
国内市場が成熟し、競争環境が厳しくなる中で、A社とB社は、両社の事業上のシナジーを総合的に勘案した結果、50:50の共同出資により新会社C社を設立し、A社の子会社であるX社の一事業部と、B社の子会社であるY社を統合することを決定しました。
クレイア・コンサルティングは、経営統合が決定し、統合プロジェクト発足の段階で両社から依頼を受け、新会社C社の人事インテグレーションを支援することになりました。
クレイア・コンサルティングは、両社が対等な立場で経営統合を進めるという精神に基づき、どちらの現行人事制度にも寄らない、新会社にふさわしい新たな人事制度をゼロから構築することを提案し、プロジェクトはスタートしました。
支援内容
人事統合は、以下のステップに基づき、約10か月間にわたって進められました。
クレイア・コンサルティングの人事統合の支援の特徴は、支援の範囲が新人事制度の設計にとどまらないことです。いくつかの移行パターンのオプションを示しながら両社の人事担当者と議論を行い、どのように移行すれば、統合による摩擦を抑えるとともに、出自の異なる両社の社員が統合を前向きに捉え、お互いに協力的な体制を早期に構築できるのか、細部まで検討を重ね、移行プランを策定しました。
また、人事統合においては、社員への円滑なコミュニケーションも大きな課題の一つです。両社の人事担当者と議論を行い、「いつ」「誰に」「どのような方法で」「どのようなメッセージを発信するか」という点について、綿密な話し合いが行われ、コミュニケーションプランを策定します。また、クレイア・コンサルティングは、これまでの他社における豊富なプロジェクト経験を踏まえ、社員説明会実施時に想定される対応策を人事担当者に指南するなど、現場での混乱が生じないよう導いていきました。
その後、両社で行われた社員説明会の結果を踏まえ、現場からあがってきたさまざまな声に耳を傾けながら、統合に向けた人事制度の最終化を進め、統合日を迎えることができました。
統合後の取り組み
M&Aにおいては、新会社が統合後に早期にシナジーを発揮し、組織が一体となって事業成長していくことが肝要です。
クレイア・コンサルティングは、統合後も、新会社の人事担当者と定期的に連絡を取りつつ、統合後の人事制度運用が適切に行われているか、統合後に新たな人事制度上の課題が発生していないか、情報交換を行いながら、適宜アドバイスやサポートを行っています。
事例2.ラグジュアリーブランドの人材育成・強化
課題
自動車会社D社は新たな高価格帯の商品・サービスのブランドを立ち上げ、全国展開していく計画を立てていました。D社はもともと大衆向けの製品・サービスに強みを持つ会社ですが、新ブランドは、既存の他ブランドとは一線を画す、富裕層向けの製品・サービスとして展開していくことを検討していました。
新ブランドの展開にあたっては、当然、新ブランドのコンセプトを理解した人材が必要になります、D社は販売現場においては、既存ブランドのビジネスに従事していたディーラ・スタッフを活用していくことを想定していましたが、ここで一つ新たな課題が浮き彫りになりました。同じ製品・サービスであっても、ターゲット層が異なれば、顧客へのコミュニケーションの仕方をはじめとする仕事のやり方を変えていく必要があります。新ブランドのコンセプトを体現する人材となるため、ディーラ・スタッフにはそれまでの価値観から新たな価値観への転換してもらう必要がありました。D社では、ディーラ・スタッフがそれまで培った経験を活かしながら、どのように新たな理念と価値観を浸透させていくのかが、大きな課題となりました。
支援内容
クレイア・コンサルティングは、D社から依頼を受け、新たな価値観を植え付けるためのブランド人材づくりの基盤構築を支援しました。
まずはD社が掲げている「車に対する満足度ではなく、人に対する満足度でブランドを構築していく」という理念から、D社が新ブランドのディーラ・スタッフに求める人材像を定義しました。クレイア・コンサルティングは新ブランドの理念を実現するためには、これまでの自動車業界としてのサービスの枠組みを超え、サービスのプロフェッショナルとしての思想を取り入れる必要があると判断しました。そのため、競合となる外国車のディーラだけでなく、ホテル業界のサービスも研究するなど、多方面から顧客に対する満足度を高めるための要素を抽出し、それをD社のディーラ・スタッフに適した形で明確にしていきました。
さらに明確化した人材像を実現させる仕組みを構築するために、新ブランドのディーラ・スタッフの選抜基準や評価方法の策定、新ブランドの価値観を浸透させるための研修体系の整備など、人づくりの基盤構築を全面的にサポートしました。研修体系は画一的な内容を提供するのではなく、階層や職種など、社員の段階に合わせて、その段階に適した目標と内容を設定し、研修講師としても支援を行いました。
そして現在
クレイア・コンサルティングがD社への支援を開始したのは10年以上前になりますが、現在も支援は続いています。支援当初は新ブランドを「創る」ことが経営課題でしたが、事業の成長に伴い、ブランドの課題は「維持・進化」へと変化していっています。また当初は新たな事業に参加するという意味で、関係するディーラ・スタッフは全員が同じ立場でした。しかし、年月が経つにつれ、ディーラ・スタッフの異動などにより、スタッフ間で理念の理解度や実践度のバラつきが少しずつ目立つようになってきました。ブランドの成長段階に応じて、将来問題になると想定される課題を先回りして提言し、解決していくことで、現在も継続プロジェクトとして進行しています。
事例3.ベンチャー企業の人材マネジメント構築
課題
E社はマーケティング・リサーチをコア事業とするITベンチャー企業です。株式市場への上場も果たし、はたからは勢いのある順調な会社のように見えていましたが、創業社長はある危機感を感じていました。これまでは上場という一つの目標に対し、社員が一丸となって突き進むことで成長できていましたが、上場という目標を乗り越え、組織が拡大していくにつれて、会社としての一体感が失われてきていると感じていたのです。実際に設立当初は社員の数も少ないことから、お互いに何を考えているかを肌感覚で把握できていましたが、組織が大きくなるにつれ、経営幹部と社員の間だけでなく、社員同士の間にも意識のズレが生じはじめていました。
解決の方向性
E社の経営幹部・社員全員が共通の目的やゴールを目指して一体感を持って成長し続けられる会社になるために、クレイア・コンサルティングは「会社の目指す姿」「会社が本当に大事にしたいこと」を、社員がわかりやすい形で共有できる仕組みを構築することを課題として設定し、まずは会社の経営理念や価値観を新しく策定しました。
経営理念や価値観の策定にあたっては、経営幹部だけでなく、一般社員まで巻き込んでディスカッションを行い、具現化していきました。一般社員を巻き込むことにより、会社への参画意識を高め、新しく策定された経営理念や価値観が、経営幹部から押し付けられたものではなく、自分たちのものであるという意識づけを図りました。
仕組みの構築のプロセス
新しく経営理念や価値観を策定しても、それが社内に浸透しなければ意味がありません。 クレイア・コンサルティングは、これらを浸透させるため、新しく策定した経営理念や価値観に基づく人事制度の構築を提案しました。
まずは会社の価値観を階層や職種ごとに落とし込み、それぞれの階層や職種における「あるべき人材像」を規定しました。これにより、会社側から社員に対して「こういう社員であってほしい」「こういう価値観を持って行動してほしい」というメッセージを送ることができます。そして、「あるべき人材像」を体現する社員を高く評価・処遇できるよう、評価制度や報酬制度を刷新しました。これにより、「あるべき人材像に近づく⇒評価や報酬による正のフィードバックを受けられる⇒社員がよりあるべき人材像を目指すようになる」という好循環の仕組みの構築を図りました。
また、より効果的に経営理念や価値観を浸透し続けるために、人事制度の構築に加え、社員間で経営理念や価値観の理解を深めあう仕組みの構築を目指しました。具体的には、一般社員に会社の目指す方向性や価値観を伝える「伝道師」にラインマネージャーを位置づけました。そして、通常業務で関わっている経営幹部や上司から提供された経営理念や価値観を体現するための方法を、ラインマネージャー自身が実行し、さらに配下の社員に伝えていく仕組みを構築することで、経営理念や価値観の上流から下流への浸透を図りました。