組織再編・合併後の事業運営や効果を発揮する上で、極めて重要となるのが新組織の経営陣、次いで管理職です。新組織に必要な各職務の役割やスキルを定義した上で、適切な人材を選定する必要があります。本稿では、新組織が求める適性や資質を役職者が備えているかどうかを判断する有効な手法としての「アセスメント」をご紹介します。
解決すべき課題
再編・合併後の経営陣・管理職をどのように選出するか?
新会社の経営陣を誰にするかは、買収の場合であれば、現経営陣は挿げ替えて内部から後継人材を昇格させる、外部から適材を取り込む、などといった選択肢もありますが、合併の場合は、現経営陣のうち誰を続投させるか、どのような役割で続投してもらうか、を早期に検討することがより重要になってきます。
現経営陣から新経営陣を選抜する場合、これまでの現経営者の経験・実績の把握に加え、評価を外部専門家に委託するケースがあります。経営者として、統合後の改革にどう向き合っていくか、類似の環境下でどのように思考・行動し、業績・成果を出してきたか、逆に課題認識に抜け漏れはないか、など、改革下で経営者としての経験・専門性を発揮できるかを、個別インタビューなどを通して把握します。
では、経営陣の下の管理職は誰を選抜したら良いでしょうか?
再編・統合後の一定期間は、旧組織体制を維持し、管理職もそのままスライドするケースも多くありますが、年功序列で昇格に格差をつけないできた日本企業では、部長職や課長職などにおいて、ラインを監督する組織長以外にも複数の社員を同じ職位につけてきたため、そもそも管理職層が肥大化していました。
組織のスリム化・生産性の向上を目的とした組織再編・合併では、統合直後または一定期間後に、重複する機能を持つ組織は整理され、実質的な組織長のポストに就ける人は少なくなり、ポストにつけない多くの管理職層が発生することになります。
また、合併する企業間で、最も人材のレベル差が大きくなるのは、課長・マネージャークラスとも言われています。旧組織の業務におけるパフォーマンスではなく、新組織が求める役職者(ライン管理職)としての適正や資質はどのように判断すれば良いのでしょうか?
その答えの1つとして、今後直面する状況における行動や判断から推察を行う、アセスメントがあります。
アセスメントは、人間の根本的な思考パターンや行動傾向、潜在能力、課題を様々な調査を通じて客観的に分析する産業心理学をベースとした人事マネジメント手法です。
内容も、人事部が行う簡単なチェックシートから、外部の人事コンサルティング会社が設計・測定を行うペーパーテスト、心理テスト、個人面接、集団討議、ロールプレイ演習、ワークショップなど、多岐に渡ります。例えば、個人面接は、コンサルタントがアセッサー(評価者)として候補者と1対1で面接を行い、過去、困難な状況に直面した際に選択した行動やその背景にある考え方などを確認し、新会社が今後の事業戦略を実行する上で、役職者や管理職に必要なコンピテンシーの保有状況を診断します。
再編・合併時にアセスメントを活用することで、新組織が求める管理職としての適性・潜在能力を見極めることができます。前述した経営陣の個別インタビューもアセスメントの一種になります。
課題解決のアプローチとクレイアの付加価値
クレイア・コンサルティングの管理職アセスメントの特長
クレイア・コンサルティングが提供する管理職アセスメントツール(以下『変革型リーダー選抜アセスメント』)は、より効果的に管理職を選抜していくために、いくつかの工夫を取り入れています。
特長1.管理職に必要なコンピテンシーを過去のコンサルティングの知見から抽出
第一の特徴は、過去のコンサルティングの知見から、管理職に必要となるコンピテンシーを抽出していることです。
数多くの組織変革コンサルティングを成功させてきたノウハウに基づいて管理職に求められるコンピテンシーを抽出しています。そのため、一般的・教科書的なコンピテンシー分類に基づくアセスメントよりもはるかに実践的な結果を得ることができます。
また、必要に応じて、各社で利用している評価項目(コンピテンシーや能力項目等)とクレイア・コンサルティングの変革コンピテンシーの紐付を行います。
特長2.管理職に必要なコンピテンシーの発揮を促す実践的な場面とビジネス環境にあわせた設問を設定
第二の特徴は、演習のなかで実戦的な場面と最新のビジネス環境に合わせた設問を設定している点です。
【管理職に必要なコンピテンシー発揮を促す場面の設定】
管理職に求められるコンピテンシーを診断するためには、管理職に求められるコンピテンシーの発揮を促す場面を設定することが重要です。
本アセスメントでは、実戦的な演習を通じて対象者のコンピテンシーを強制的に引き出し、その保有状況を診断することで、管理職としての資質を有している人材を発掘することを可能にしています。
例えば、管理職として職務遂行しなければならない様々な場面を設定し、対象者がその場面に相応しいと考える言動を記述させる演習があります。この演習は設問ごとに回答時間が決められているため、即座に対応しなければならない場面において対象者が適切な能力を備えているかどうかを診断できます。
さらにアセスメントを進化させ、アセスメントの設問場面として、管理職が直面する最新のビジネス環境を反映(*1)し、診断基準も時代にビジネス環境下で管理職に特に強く求められる要素を盛り込んでいます(*2)。
(*1)不祥事が発生した場面での管理職の対応行動を問う設問
(*2)対象は、「ビジョン構築力」「外部指向性」「多様性重視」「革新性」
特長3.記述式による独自の判定
第三の特徴は、選択式ではなく記述式回答を採用している点です。
【アセスメントツールの設問イメージ】
記述式にすることで、評価対象者は具体的な内容、例えば「実際にどのような行動をとるか」といった事柄を記載しなければなりません。そうすることにより、対象者の多様な回答を引き出せ、採点者は回答を様々な角度から測定することができます。
場当たり的に回答を選ぶという選択式では可能な行為が抑制され、記述式の回答では本人の意思が明確に表れていると考えられるため、信頼性の高い結果を得ることが可能になります。
回答結果の測定は、クレイア・コンサルティングの専門アセッサーが回答内容一つひとつチェックし、採点基準に基づいて採点を行っています。
記述式にすることで、評価対象者に具体的な内容、例えば「実際にどのような行動をとるか」といった事柄を記載させることができます。このようにオープンな設問に対しては多様な回答が発現することとなり、採点する側も回答を様々な角度から測定することができます。
特長4.選抜に適した詳細なフィードバックを実施
第四の特徴は、人材選抜に関わる意思決定を支援できる詳細なフィードバックレポートを提供している点です。
【フィードバックレポート】
特長5.オンラインの実施で状況に合わせて柔軟に対応
クレイア・コンサルティングのアセスメントは、受験者の対象層をより広げられるように、個社・受験者の状況に応じて在宅勤務でも受験できるように、オンラインで診断が可能です。
※集合形式(会場に集合して紙で受験)で実施も可。
【オンラインアセスメントの流れ】
コンサルティングのイメージ・事例
人材マネジメントの考え方の違いは統合効果の最大化の障壁になる可能性があり、新組織の管理職に求められるポテンシャルを評価(アセスメント)することは重要になってきます。
①統合直後に新組織の管理職を決めるケース
事業規模が異なる企業の合併の場合や買収される場合など、事業規模の大きい組織の役職者を長にすれば済むケースもあります。一方で、同じような規模の組織の対等合併では、統合後の組織規模が2倍になり、従前より管理職の役割や責任が大きくなるケースもあります。従前の組織規模はマネージできても2倍の組織は難しい、実は本人は管理職を続けることに乗り気ではないケースもあります。
アセスメントは、対象者の特性、潜在能力、行動傾向を個別に分析するため、一定の時間と費用を要し、全従業員に対して実施することは現実的に難しいです。統合前に両社の管理職を集めて、記述式のアセスメントを行うことが難しい場合などは、経営陣を中心にクレイア・コンサルティングのコンサルタントが1~2時間のヒアリングを行い、外部の専門家の目線で、新組織で求められる管理職の適正や資質があるかを判断します。
②一定期間後に管理職を決めるケース
統合直後は旧組織の体制を維持するとしても、現在の役職者から任用するのか、後継者を内部から昇格させるのか、または新組織における管理職として該当する社員がおらず外部から採用するのか。これらは統合後できるだけ早い段階で検討する必要があり、そのための材料として、既存役職者のポテンシャルを評価する必要が出てきます。
①のケースに比べ、時間的余裕があるため、記述式のアセスメントによる人材選抜をお薦めしますが、例えば、新会社における評価基準を策定し、旧組織の体制を維持している期間、旧A社の経営陣が旧B社の管理職を、旧B社の経営陣が旧A社の管理職をクロス評価し、評価結果によって新会社の管理職を選出する方法もあります。クレイア・コンサルティングでは、新会社が求める評価基準の設計も行っています。