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グループ再編時の人事支援(グループ人事)

解決すべき課題

M&Aにおける組織設計の肝は「業務再定義」と「人材再配置」

M&Aの場面における組織設計は、これまでの組織と業務体系を再構築することを意味します。新しい組織をゼロから立ち上げるのではなく、これまでの組織と業務の体系、そして業務に従事していた人材を「再構成して再配置する」ということになります。

異なる業務プロセスや、異なる業務プロセスに慣れた人材を「再構成して再配置する」ためには、組織図を描くだけではなく、職務記述書(ジョブディスクリプション)のレベルまで落とし込んで検討・定義していく必要があります。(組織図を書き直しただけでは、旧来型の業務プロセスや職務行動が残存してしまい、新組織に対する混乱や反発につながる可能性があります)

新組織への「移行プラン」が重要

新組織(および新業務体系と新人材配置基準)は、それ以前の組織とはギャップがあります。M&Aの場面では、このギャップは大きく、また、関係する会社間でもギャップの在り方に違いがあります。

特に、新業務体系への移行においては「必要スキルの習得」、新人材配置基準への移行においては「人員の余剰と不足の調整」が不可欠であり、場合によっては、新組織への段階的な移行ステップが必要になる場合もあります。

組織設計は、機能論だけで成就するものではなく、組織を構成する「業務と人材」の実態を的確に把握し、現実感のある移行プランが伴って、はじめて成功するものであると考えます。

課題解消のアプローチとクレイアの付加価値

クレイア・コンサルティングは、経営戦略実現に向けた組織・人事課題の解決経験を豊富に有しており、組織機能論にとどまらず、組織に配置する「人材」を有効に機能させるための課題解決ノウハウを備えています。

組織設計の進め方については、後段の「コンサルティングのイメージ・事例」で詳説しますが、「経営戦略というトップダウンの視点」と「人材というボトムアップの視点」の両方を備えた組織設計を支援します。

経営分野に関する深い理解

経営全体の把握力

クレイア・コンサルティングは、企業の経営全体に対する深い理解を持っています。クライアントが直面する課題や経営の方向性、そして企業の長期的なビジョンにもとづいた助言を提供できることが強みです。単なる個別の部門や問題に留まらず、企業全体の戦略に関連する提案を行うことで、統合的な支援を行います。

組織・人事に関する深い知見

経営の中でも特に重要であり、ときに最も難しい「組織・人事」に焦点を当て、人材マネジメントにおける深い知識と実践的な解決策を提供します。人材に関する課題解決は、企業全体のパフォーマンスに直結するため、クレイア・コンサルティングではその重要性を常に認識しています。

徹底した現実感

理想と現実の橋渡し

クライアントが目指す理想の状態(To Be)を理解するだけでなく、それをどのように現実化できるのか、具体的なステップを示すことに注力しています。

クライアント企業の深い理解

クライアントの状況や市場を深く理解しようとする姿勢を心掛けています。この深い理解が、現実感を持った施策につながっています。

強力な説得力

人材と人事に関する豊富な知見

クレイア・コンサルティングは、人材管理や組織マネジメントにおいて豊富な知見を持ちます。それらにおける課題と改善点を正確に把握し、クライアントの組織に合わせてカスタマイズされたアプローチを提示します。

明確なコンセプトと理論的根拠

クレイア・コンサルティングが提示する解決策は、実用的であるだけでなく、明快なコンセプトと理論に裏打ちされています。厳密に定義された用語と理論的な枠組みは、論理的な一貫性と納得感をもたらします。これによって、提案施策を自社に適用可能なものとして、クライアントに理解してもらいやすくなります。

クライアントの実情に基づく説明

提案時には、クライアントの実際の状況やデータを活用し、具体的な例を挙げて説明を行います。これにより、提案が抽象的な理論やコンセプトにとどまらず、実務にどう活かせるかが明確になり、クライアントにとって実行可能であることを実感してもらえます。

コンサルティングのイメージ・事例

組織設計においては、「組織図を描く」だけにとどまらず、ジョブの設計、人材配置基準の設計、人材フローの設計までを一貫して行い、新組織が機能するために必要な事項を網羅的に検討・設計します。

【組織設計の流れ】

組織設計の流れ

①組織構造の設計(組織図、権限規程)

組織図の設計

組織図は、企業の骨格となる部分です。事業の数や規模、事業所の場所などをもとに、組織の基本的な枠組みを決定します。組織再編の目的や企業の長期的な戦略に合わせて、組織図をデザインし、各部門や事業所の位置づけを明確にします。

ミッションの設計

全社戦略を細分化し、各組織にミッションとKPIを設定します。この際、以下の点が重要です。

  • 各組織のミッションは、全体の組織理念に統合されるように設計します
  • 組織には複数のミッションを設定しないようにし、シンプルで明確なミッションを与えます
  • 組織を硬直化させず、柔軟な対応ができるように、ミッションには解釈の余地を残します

権限の決定

ミッションとKPIが設定された後、その達成に向けて必要な意思決定権や実行権限を各組織に付与します。具体的には、以下のような権限が含まれます。

投資決定権
事業拡大や改善を図るための投資に関する決定
人材採用・異動決定権
必要な人材の採用や組織内での異動に関する意思決定
外部委託決定権
業務の効率化や専門性を高めるための外部リソース利用に関する決定

さらに、各組織が持つ権限の範囲を明確にするため、権限がない場合には、どのような承認プロセスを経る必要があるかを規定することが重要です。このプロセスの透明化により、組織全体の効率性を高めながら、意思決定の責任の所在を明確化します。

【補足】ガバナンスの観点からの権限管理

権限を付与する際には、適切なガバナンスの仕組みが不可欠です。ガバナンスは、組織の健全な運営を確保するために必要な制御や管理の仕組みを整える役割を果たします。権限管理におけるガバナンスの観点として、以下の要素が挙げられます。

評価
経営層が各責任者のパフォーマンスを評価し、その評価に基づいて処遇を決定します。評価基準を明確にし、公平な評価プロセスを構築することで、信頼性の高い権限行使を支援します。
レポートライン
各責任者から経営層への定期的な報告義務を設け、組織内での情報共有を促進します。レポートラインを通じて、経営層は組織の状況を把握し、必要に応じて迅速な対応を行うことができます。
モニタリング
内部統制やCSA(自己査定)、内部監査を定期的に実施し、組織全体の運営状況をチェックします。モニタリングによって、リスクを早期に発見し、適切な対策を講じることが可能となります。
内部通報
不正やコンプライアンス違反に対処するため、内部通報窓口を設置します。社員が匿名で通報できる仕組みを整備することで、組織の透明性と信頼性が向上します。

上記のガバナンスの観点に基づき、制御の範囲を超えた権限については付与せず、健全な意思決定が行われるようにします。これにより、組織内での権限行使が適切に管理され、目標達成に向けた活動を効率的かつ効果的に進められる環境を整えることができます。

【ガバナンスの観点】

ガバナンスの観点

②JOBの設計(ジョブディスクリプション)

組織設計を行う際には、単に組織構造を作成するだけではなく、各職務(ジョブ)を明確に定義することが不可欠です。

管理職の職務の設計

管理職は、基本的には役職者が担います。通常、組織図上の各組織に1名の組織長を設置しますが、組織長が管理する部下が多くなりすぎる問題が生じる場合もあります。これを整理するため、次の2つの視点を考慮します。

例外対応の頻度

業務によって、例外対応の頻度が異なります。たとえば、製造ラインのように手順が明確な業務では判断を要するケースが少ないため、管理の幅を広くすることが可能です。一方で、経営企画部門のように、マニュアルで解決できない問題が多く、判断を要する機会が多い業務では、管理の幅を狭める必要があります。

例外分析の難易度

部下の職務が異なる機能を担当する場合と、同じ工程で分業を担う場合では、管理の難しさが異なります。異なる機能を担う場合には、管理の幅を狭めることが望ましいです。

これらの観点を踏まえ、管理の幅が広すぎる場合には調整を行い、例外処理に必要なリソース(管理職補佐の設置、熟練者の割り当て、時間的猶予の確保、外部委託のための予算確保など)や業務の見直しを確保する対策も検討します。

【管理の幅】

管理の幅

【補足】業務の見直し

組織再編、特に統合の場合には、業務フローの見直しが必要になることがあります。業務改革を行う際には、まず現状の分析(帳票の整理、ヒアリング、アンケートの実施)を行います。業務の改善ポイントを踏まえたうえで、標準化や一元管理、業務の集約、承認プロセスの見直しなどの観点で業務を最適化します。これによって、組織全体の効率性を向上させることができます。

一般職の職務の設計

一般職の職務設計は、管理職の職務をもとに行います。組織のミッションを管理職にカスケードし、さらに一般職にも展開します。知識や技術、技能、経験が共通するタスクもしくは目的が類似するタスクをまとめ、1つの職務として定義します。次の2つの要素を考慮します。

  • 一般職のモチベーション向上
  • キャリアパスの可視化・育成体制の整備
一般職のモチベーション喚起

仕事への満足を高めるには、単に同種のタスクを増やす職務拡大ではなく、異なる種類のタスクを複数担当させる職務充実が必要です。水平的分業や垂直的分業において、以下のような点を検討します。

  • 判断のレベル:職務に必要な判断のレベルを調整します
  • 異なるタスクの種類:職務に含めるタスクの種類を多様化します

一方で、モチベーションを高めるためには多様で難易度の高い職務が望まれますが、組織全体の観点も重要です。一般職に重要な判断を任せることで処理スピードは向上しますが、特に慎重な判断が必要なタスクについては、熟練者の判断が求められることもあります。また、習熟に時間がかかる場合には職務を細分化し、効率性を確保します。

キャリアパスの可視化・育成体制の整備

一般職においても、職務の難易度に段階を設け、下位の職務をクリアすれば上位職務へと段階的に進めるようにします。成長には失敗が伴うことも多いため、上位職務者が下位職務者を日常的に指導する体制も重要です。これにより、社員の成長を支援し、組織全体の力を高めていきます。

【一般職の職務設計】

一般職の職務設計

➂人材配置基準の設計(適正要員管理)

組織のミッションの達成のために必要な人材要件(質)はジョブディスクリプションで定義されています。この後は、ジョブごとの適正な人員数(量)を測定する必要があります。つまり、各ジョブディスクリプションに基づいて、どの職務に何人の人材が必要か(適正人数)を決定するプロセスです。アプローチは、トップダウン方式とボトムアップ方式の2つがあります。

【トップダウン方式とボトムアップ方式】

人材配置機銃の設計_トップダウン方式とボトムアップ方式

トップダウン方式

このアプローチでは、経営数値を基準に全社および各部門の人員数を決定します。

  • 売上高目標や営業利益目標が設定され、そこから人件費予算総額が計算されます。
  • 総額人件費が決定した後、人件費予算総額を平均人件費で除すると、保持できる人員数が求まります。
  • この人数を各部門に割り当て、各部門が各ジョブに対して何人を配置するかを決定します。部門内における管理スパンや職種の市場価値、事業戦略にもとづく部門の優先順位を踏まえて、各部門へのリソースの配分を取り決めます。

ボトムアップ方式

ボトムアップ方式では、各部門の業務構成に基づき人員計画を自ら提出します。

実際の業務状況に応じた人員の要求を各部門が行うため、現場の実態に沿った計画が反映されやすいという利点があります。

しかし、各部門においても、完全に部門裁量ではなく、人員計画の根拠を示すことを求めた方がよいでしょう。各部門は過剰な人数を申請する傾向にある一方で、経営は各部門の必要人員数を部門ほど正確に判断できません。その結果、提出された計画の人員数を抑制できず、人員数が過大になるリスクがあります。

そこで、以下のような人員計画の根拠の示し方が必要になります。

  • ライン部門については、部門単位ごとの売上高目標を一人当たり平均売上高で除することで、必要人員数のガイドラインを定めます。
  • 管理部門については、間接部門の比率などを用いてコントロールします。
  • なお、このとき計算に用いる平均売上高は、生産性の向上や物価の上昇を考慮します。

両アプローチにはそれぞれのメリットとデメリットがあります。責任と権限の所在や、事業の性質を踏まえて、アプローチを適切に選択することによって、最適な人員配置を実現することができます。

④人材配置の考え方(全社最適の視点、部門最適の視点)

必要な人材の質と量が決定した後、「誰をどこに配置するか」を決定します。この際、配置によって起こりうる副作用や、その対策を慎重に検討しなければなりません。このプロセスは非常に複雑です。戦略的に進めなければ、組織をデモチベートし、生産性が低下するリスクが高まります。

統合においては、事務所を単純に統合して、双方の人員に同じ仕事を与えていては、統合効果を十分に得られません。むしろ、より少ない人員で同等、またはそれ以上の成果を達成するために、業務の効率化や無駄の排除が不可欠です。人員配置は、全社最適の視点と、部門最適の視点の両方が重要となります。

【全社最適の視点と部門最適の視点】

全社最適の視点と部門最適の視点

全社最適の視点

経営資源の配分

全社最適の視点には、経営資源の適切な配分が不可欠です。人的リソース、資本、設備などの配分は全体のバランスを見ながら決定し、パフォーマンスの最大化を目指します。成長が見込まれる事業には積極的な投資を行い、成熟期にある事業には効率化を優先するなど、戦略的な資源配分が求められます。

人材育成プログラムの設計

短期的な最適化だけでなく、将来的な成長を見据えた人材育成が必要です。全社的な人材育成プログラムを設計し、実施することで、統合後も持続可能な成長を実現し、長期的な利益を生む体制を構築することが求められます。

企業文化の一貫性と柔軟性

異なる企業文化を持つ組織を統合する際には、文化的な調和が不可欠です。新しい組織の価値観やビジョンを明確にし、全社員に浸透させることで、統一感のある運営を目指します。ただし、ローカルな支店や部門の文化を無視することは逆効果となるため、一貫性と柔軟性のバランスを取ります。

部門最適の視点

年齢構成・等級構成のバランス

組織の円滑な運営のために、年齢や等級などをバランスさせます。たとえば、若手が多すぎると、組織としての対応力が十分ではなく、商品・サービスの質を維持しづらくなります。逆に中堅層が多すぎると、高単価の人に簡単な仕事を割り当てる非経済性が生じます。経験豊富な人材と若手が協力して運営できる体制を整え、組織全体の最適化を図ることが重要です。

知識・経験のバランス

組織内で知識や経験が偏らないよう、各部門に経験豊富な人材を配置し、知識共有を促進します。これにより、組織全体が持続的な成長を維持することが可能です。

社員のモチベーション維持

社員は、役割や職務が統合後に変わることに対する不安や抵抗をよく感じます。期待役割の伝達やキャリアパスの明確化、インセンティブの付与を行うことで、社員のモチベーションを高め、組織全体の活力を維持することが重要です。

AUTHOR
針生 俊成
針生 俊成 (はりゅう としなり)

クレイア・コンサルティング株式会社 執行役員COO マネージングディレクター
筑波大学第二学群人間学類卒業

トーマツコンサルティング、アーサーアンダーセンを経てクレイア・コンサルティングの立ち上げに参画。
幅広い業種における統合的人事制度改革、コンピテンシー設計、人材アセスメント、人材育成、意識改革、ES(従業員満足度)向上等、多数の人事コンサルティングプロジェクトに従事。合併や分社等の組織再編に伴う人事制度改革、高度専門職の人事制度設計やコンピテンシー設計、ブランドマネジメントと連動した人材マネジメントのコンサルティング等の実績も豊富。

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