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ワークエンゲージメント

「ワークエンゲージメント」とは、ユトレヒト大学のシャウフェリ教授らが提唱した概念で、「仕事に関連するポジティブで充実した個人の心理で、活力(仕事から活力を得ていきいきとしている)・熱意(仕事に誇りとやりがいを感じている)・没頭(仕事に熱心に取り組んでいる)の3つが揃った状態」と定義しています(*1)

また、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた「一時的な状態」ではなく、仕事に向けられた「持続的かつ全般的な感情と認知」と特徴づけられています。

つまり、ワークエンゲージメントは「個人」と「仕事全般」との関係性を示す概念で、持続的かつ安定的な状態を捉えていると言えるでしょう。

ワークエンゲージメントは仕事における前向きな感情という点で、類似する概念が多く存在しますが、ここでは特に比較されることの多い「職務満足感」「組織コミットメント」との違いを通して、ワークエンゲージメントの特徴を確認します。

職務満足感との違い
ワークエンゲージメントと職務満足感は、仕事への態度・認知が「快」であるという点で共通しています。しかし、職務満足感は仕事「に関する/対する」受動的な感情であり、仕事「をしているとき」に高い活動水準を示すワークエンゲージメントとは異なると言えるでしょう。
ワークエンゲージメントとは
(*2)島津明人・江口尚 『ワーク・エンゲイジメントに関する研究の現状と今後の展望 「産業医学レビュー」 Vol.25 No.2』(2012年8月)を参考に弊社作成
組織コミットメントとの違い
ワークエンゲージメントとMawday et al.(1979)らが提唱した組織コミットメント(特定の組織に対する個人の一体感と関与の相対的な強さ)は、仕事において熱意があるといった点で共通しています。しかし、組織コミットメントは個人と組織の関係を示す一方で、ワークエンゲージメントは個人と仕事全般の関係を示しています。

ワークエンゲージメント向上による効果とは

働く人のワークエンゲージメントが高まることで組織には具体的にどのようなメリットがあるのか、研究論文をもとに、ワークエンゲージメント向上における効果を、①個人のアウトカムと②企業の業績という2つの面から解説します。

①個人のアウトカムに与える影響

ワークエンゲージメントの向上、つまり「いきいきと誇りを感じながら熱心に仕事に取り組むようになること」で、さまざまなポジティブなアウトカムを予測することが多くの実証研究において支持されています。

代表的なものは、仕事におけるパフォーマンスや革新性・創造性、自発性の向上、組織コミットメントの向上、定着率の向上、抑うつ、不安の減少、健康増進などが挙げられます。

②企業の業績に与える影響

Xanthopoulou, Bakker, Demerouti, & Schaufeli(2009a)は、ワークエンゲージメントと収益に正の相関があることを、ファストフード3 店舗の従業員42名を対象とした研究から明らかにしました(*3)

この研究では、ワークエンゲージメントを、長期にわたって安定しつつも短期的に変動しうると想定したうえで、日ごとのワークエンゲージメントの高さが日ごとの店舗の収益と相関することが示されています。

また、「ワークエンゲージメントと経済指標などの客観的なアウトカムとの関連を検証した研究はごくわずかしかない」とされています(*4)

しかし、ワークエンゲージメントの高い社員は誇りややりがいをもちながらいきいきと、そして熱心に仕事に向かうため、自社の戦略への理解度や戦略の実現に向けた貢献意欲が高いことに加え、前述の個人のアウトカムもポジティブなものとなることから、結果として高い業績が実現されると考えられています。

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参考

  1. Wilmar B. Schaufeli,Marisa Salanova,Vicente Gonzalez-roma & Arnold B. Bakker. THE MEASUREMENT OF ENGAGEMENT AND BURNOUT:A TWO SAMPLE CONFIRMATORY FACTOR ANALYTIC APPROACH. Received 15 December, 2000; Accepted 5 August, 2001. https://www.wilmarschaufeli.nl/publications/Schaufeli/178.pdf , (参照 2022-7-1).
  2. 島津明人, 江口尚. ワーク・エンゲイジメントに関する研究の現状と今後の展望. 産業医学レビュー Vol.25 No.2, 産業医学振興財団, 2012年, p.79-97.
  3. Xanthopoulou, D., Bakker, A. B., Demerouti, E., & Schaufeli, W. B.(2009a). Reciprocal relationships between job resources, personal resources,and work engagement. Journal of Vocational Behavior. 2009, vol74, p.235-244.
  4. Xanthopoulou, D., Bakker, A. B., Demerouti, E., & Schaufeli, W. B.(2009b). Work engagement and financial returns: A diary study on the role of job and personal resources. The British Psychological Society. 2011-1-10. https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1348/096317908X285633 , (参照 2022-7-1).

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