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2章 日米の「人事制度」を再点検する③

クレイア・コンサルティング 2017.8.2
日本型人間主義人事制度のデメリット(社員側)
①仕事の成果と処遇の関係が曖昧で、短期的な努力と報酬がリンクしない
処遇の機軸は「能力」という安定的な要素ですから、仕事の成果に応じて短期で大きく変動する余地は極めて少ないのです。 長い目で見れば、仕事で成果をあげ続ける社員は「能力が高い」と認められ、高い処遇を得ることができます。しかし、「今年は頑張った、結果を出した」という思いには、その年の賞与なり昇給はほとんど応えてくれません(もちろん、客観的に見ても結果を出したと認められる場合の話です)。 これは、短期的なモチベーションにはマイナスでしょう。すなわち、仕事の目的や欲求を“より短期的な仕事の成功”と“高い報酬”に置く社員にとっては、決してモチベーションを刺激される人事制度とはいえません。
②ひとつの企業にしばられたくない場合に困る
また、人間主義人事制度は、長期的な雇用関係を前提に構築されています。すなわち、長期間その企業に勤め続けようとする社員には、十分に魅力的と感じられますが、ひとつの企業にしばられたくない(ひとつの企業に自分の職業人生を託すリスクをとりたくない)社員には、デメリットに感じるでしょう。 たとえば、処遇に基軸となる「能力」の評価は、短期的に見れば極めて曖昧さが目立つ仕組みです。しかし、何年、何十年というスパンで、またさまざまな上司のもとで、仕事振りや仕事の成果を検証していくことで、おおむね衆目が一致するような能力評価に収斂していきます。 長期間その企業に勤めれば、さまざまな視点から自分の能力を適切に見てくれる可能性がありますが、短期間で正当に能力を評価される可能性は低いでしょう。
さらに、「企業が社員に求める多くの能力が、その企業に特有の能力(ノウハウ)である」ということもまた、社員にとっては大きなポイントです。これは、メリットともいえますし、デメリットともいえます。 企業に特有の能力は、新しく入ってくる社員に対しての“参入障壁”となり、企業の中では職務を確保・維持するのに役立ちます。一方、ひとたび企業外に出れば、「その能力はまったく評価されない」というリスクをはらんでいるわけです。 大企業でも倒産するということが一般的になりつつある現在では、デメリットに感じる社員のほうが多いのではないでしょうか。
次にあげる米国型職務主義人事制度のメリットは、日本型人間主義人事制度の「短期的な努力と報酬がリンクしない」というデメリットを補ってくれます。
米国型職務主義人事制度のメリット(社員側)
◎短期的な仕事振りや成果がすぐに報酬に反映される
つまり、成果と報酬の関係が明快なのです。 短期的な仕事の成果を直接報酬に反映させるため、個人の成果を測定するための考え方や測定基準は、日本企業に比べて充実しています。自分の努力や頑張りの結果がすぐに測定され、報酬という形で認められることは、社員のモチベーションアップに大きく寄与します。
しかし、米国型職務主義人事制度は、成果を出せない社員にとっては厳しい制度であるともいえます。それだけでなく、次のようなデメリットもあります。
米国型職務主義人事制度のデメリット(社員側)
◎職務選択のリスクが個人に負わされており、職種転換が容易ではない
社員の能力開発は、常に「いまの職務の成果につながるか否か」という視点で行われています。つまり、処遇の機軸は職務であり、いまの職務に直接関係しない能力を高めてもメリットはないわけです。 どんな職務に就いて能力を発揮するかは、社員の自己責任に任されていて、会社都合による異動が日本企業のように頻繁に行われることはありません。 これは、一見すると合理的で、社員本人の意思を尊重しているようにも思えますが、一方で、職務そのものが技術革新などによって消滅してしまった場合に、新しい仕事を見つけることは容易ではありません。
※この内容は2003年に書かれたものです。

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