新たな組織・人事のマネジメント構想
「時間と場所・空間への認識の変化」を特徴とするニューノーマル。企業はどのような「軸」を以って、自社の組織や人事を考えればよいのでしょうか。
第2回から第6回までは、ジョブ型雇用や評価制度、人材開発といった個別のテーマについて解説しました。
本稿では、もう一度、マクロ的な視点に戻り、ニューノーマルでの組織・人事のマネジメントの構想について検討します。
新たな組織・人事のマネジメント構想のコンセプト
ニューノーマルでの業務遂行は、遠隔(場所・空間の分離)かつ非同時(時間の分離)が基本となります。
最大の課題は、
- 従来のコミュニケーション空間が消滅あるいは縮小すること
- 従来のコミュニケーションの形態が円滑に機能しなくなること
です。
ここでの「コミュニケーション」とは、言語的なものだけではなく、非言語的な意思疎通を含みます。
ニューノーマル時代において、いかにコミュニケーションのあり方に対応する組織・人事のマネジメントを構築するのか。それには、企業の組織能力の維持・向上させ、人材獲得競争で優位に立ち、社員一人ひとりが活躍し、業績に貢献することが重要な要件となります。
つまり、新たな組織・人事のマネジメントとは、「自律的な個人の集合による組織目的の達成」を目指す構想です。
これまでは、働き手同士の近接性や同時性を前提にして、業務の相互依存や上司の直接支援によるマネジメントが行われていました。
しかし、ニューノーマルでは、「隣の人と少しずつ調整する」という仕事の仕方や、「部下の表情、動きを見ながら手取り足取り誘導する」という指揮・指導は難しくなります。従来の「時と場所」に依存した働き方と比べ、より自己完結の色彩をもつ働き方へと変化を迫られています。
とはいえ、企業組織は個人事業主の集まりのような単なる「自律的な個人の集合」ではなく、あくまでも組織目的を達成することが求められます。
この2年のコロナ禍での経験から、当面の事業継続のための体制に一定の目途がついていても、本来の企業がもつ能力を活かした新たな価値の創造を目指す時、まだニューノーマルでのあり方に不安を覚えるのではないでしょうか。
それこそが、本稿における「自律的な個人の集合による組織目的の達成」という構想の背後にある課題意識なのです。
新たなマネジメントを実現する手がかり
新たな組織・人事のマネジメント構想では、企業組織でのコミュニケーションを変えていくことが大切です。
その手がかりとして、組織内のコミュニケーションを、機能および関係性の切り口から、「インフォメーション」、「コーディネーション」、「ディレクション」、「インスピレーション」の4つの視点に分けて考えます(*1)。
インフォメーション の視点 | 必要な人に必要な情報が渡るかどうか |
コーディネーション の視点 | 組織目的のために個人の行動を調整できるかどうか |
ディレクション の視点 | 組織目的への方向性を示せるかどうか |
インスピレーション の視点 | 組織目的に必要な気づきを生み出せるかどうか |
さらにこの4つの視点を、「情報の流れを整理するか、新しい情報の流れを作り出すか」という機能の軸と、「個の力が源泉か、集団の力が源泉か」という関係性の軸で整理してみました。
概要を予め言うならば、ニューノーマルにおけるマネジメントでは、以下のことを目指していかなければなりません。
- 一人ひとりが判断して仕事ができること(インフォメーションの視点)
- 共通の目的を実現するための連絡・調整を単純化すること(コーディネーションの視点)
- 組織目的を示す見方や意味づけを提供すること(ディレクションの視点)
- 組織目的を達成するためにすべきことを発見すること(インスピレーションの視点)
遠隔時・非同時の業務遂行をするために、インフォメーションの視点とコーディネーションの視点は不可欠です。そしてディレクションの視点とインスピレーションの視点は、組織目的を達成する動態的なコミュニケーションを志向します。
これら4つの視点が独立して効果が生じるわけではありません。
インフォメーションの視点とコーディネーションの視点から可能になる自律的な職務遂行は、各自の仕事への積極的な意識と関心を生み出し、新たな情報の流れを作り出すことへの主体的な関与を引き出します。
ニューノーマルにおける組織・人事のマネジメントには、企業組織におけるコミュニケーションのあり方を再設計することが必要ですが、そのためには、どのような組織構造でなければならないのでしょうか。
いかなる職務システムや人事制度を持てばよいのでしょうか。
そして、働き手の意識や価値観をどう変えていくべきでしょうか。
“インフォメーション”の視点から考える
従来は、職場(オフィス)の働き手同士が物理的に近接した空間で、言葉を交わしたり、会話が勝手に聞こえてきたり、互いのしぐさを読み取ったりと、容易に情報を伝達することができました。そのため、特に職場のフロアを跨がないコミュニケーションでは、インフォメーションの視点はあまり意識されていませんでした。
それはつまり、「誰が情報を発信し、誰が受け取り、情報を処理するか」という流れを、それほど明確に考える実際上の必要性が低かったということです。
ところが、ニューノーマルの働き方では、同じ職場のフロアに集まっているわけではないため、そのような「はっきりしない」コミュニケーションは機能不全に陥る、あるいは著しい非効率を招きます。
ニューノーマルによるコミュニケーションの非合理性
いまもむかしも現実に手を動かして業務を遂行するのは一人ひとりの個人ですが、分業化された組織において業務を実行させるコミュニケーションは、標準化、計画、相互調節のいずれかになります(*2)。
- 標準化
- いわゆるマニュアル化であり、規則や手順を定めてそのとおりに行うことを命じます。
- 計画
- タスクとスケジュールを決定し、それに則ってタスクを行います。
- 相互調節
- 頻繁に意思疎通をしながら都度の行動を決定し実行します。
標準化はマニュアルに従えばよいため、成果物を確認する手段さえあれば問題にはなりません。しかし、リモートワークができ、かつマニュアル化ができる業務は自動化が進んでおり、もはやコミュニケーションの問題からは外れつつあります。
これに対して、計画や相互調節は、それが働き手同士で多頻度のコミュニケーションを行うことを前提とする場合、時間・空間を異にするというニューノーマルの特徴とは相性が悪いものになります。なぜならば、場所を異にして多頻度のコミュニケーションをするのは、負荷が高すぎるほか、迅速性が落ちるために競争劣位に繋がりかねないからです。
このことは、リモートワークにおいてマネジャーが「過剰なコラボレーション」で忙殺されてしまったことと無縁ではありません。
いままでと同じ仕事の進め方のまま働く場所を分散させたために、マネジャーと部下の間での日々の業務の計画やすり合わせを、対面に比べれば(表情などを含めた)情報量や迅速さで劣る手段にて、そっくりそのまま継続せざるを得なかったことが起因しています。これは持続可能であるとは言えません。
ニューノーマルに合った合理的なコミュニケーションとは
ニューノーマルにおいては、個人が自律的に業務上の選択をして行動する職務体系である必要があります。例えば、担当者がより顧客に近いところで判断して提案するといった具合です。
他方で、テクノロジーの発達により時間と場所を問わない情報の収集・蓄積・分析が可能となったため、個人レベルで業務プロセスを改善する知見を導き出し、行動を支援することも求められるようになりました。
つまり、上司が一人ひとりに多頻度で細やかな指示や支援をするという仕事の回し方ではなく、
- 情報に近いところで担当者が迅速に処理すること
- 集積的に情報を処理し分析して計画的に改善すること
- これらが結合した業務体系に変えること
が必要となります。
ニューノーマルでは、これらが組み合わさることによって初めて、自律的な業務遂行と組織的な業務の質の向上を同時に企図するコミュニケーションが可能になります。
例えば、古典的には社員が自ら行動できる学習支援やマニュアル整備であり、現代的にはBI(ビジネス・インテリジェンス)による情報分析が、具体的な展開の手がかりとなります。
“コーディネーション”の視点から考える
前章のインフォメーションの視点は、組織における合理性と有効性の点で「よい」決定と行動をするためのコミュニケーションを考えました。
それに対して、コーディネーションの視点では、組織のメンバーが「同じ」決定と行動をすること、目標のために共同して相互に一貫した決定および行動をするためのコミュニケーションを考えます(*3)。
上司に依存しない体制を構築する
ハーバート・サイモンは、「経営組織は協働的行為のシステムである」と言います。一人ひとりのメンバーが共通の目標のために適切な手段を選ぶためには、他のメンバーが何をしようとしているかについて正確に予期しなければなりません(*4)。
伝統的な経営組織の考え方では、組織のいざこざを解決するのは、各組織階層で権限を持つマネジャーです。しかし実態を考えれば、そうした指摘は適切ではありません。
多くの場合、定常的な業務は水平的なコミュニケーションや権限行使を伴わない意思疎通によって調整がなされている、と言うべきです。このことは、ニューノーマルでは特に強調すべきです。あらゆる調整に各階層のマネジャーが対応することは、とても非効率です。
またコーディネーションでは、非言語的な信号が大きな意味をもっていると考えられます。例えば、会議で相手が表面的には肯定する素振りを見せても、表情や声から否定的な反応を感じた場合、相手は実際に行動しないであろうことも含めて、自らの活動を組み立て直すことも考えられます。
ニューノーマルにおける組織と職務のマネジメントでは、「上司」だけに依存しないコーディネーションの必要性はさらに高まり、非言語的な信号が使いにくくなることによって生じる不都合を最小化する工夫が求められます。
コーディネーションの工夫と新たなコミュニケーションの確立
これらの対応として以下の2つの方法が考えられます。
- ①
小さなコーディネーションで済むようにすること
- ②
代替的なコミュニケーションの経路を設けること
①の方法は、インフォメーションの視点と同様の考え方であり、一人ひとりがなるべく独立して業務を遂行できるように職務を再設計することです。大人数での相互調節ではなく、少人数のチームで一定範囲の業務を遂行できるように組織の構造や単位を見直すことも有効です。
②の方法は、複数のコミュニケーションの形態を強化したり、代替の調整役を置いたりすることが選択肢となります。例えば下図のように、いくつかの階層で考えていくことが望ましいでしょう。
主体:経営者
最上段の階層は、組織のミッションや組織規範による発信です。
一見コーディネーションとは関係ないようにも見えますが、一人ひとりの「視点」を揃えること、共通の言葉を提供することに寄与します。職場の「阿吽の呼吸」が浸透したところでは、いくら言語でミッションを語っても上滑りしていたかもしれませんが、職場空間を離れた働き方では、むしろそうした語りが大きな意味を持ちます。
主体:マネジャー
中段の階層は、最も難しいところです。
組織長としての公式的なマネジメントでありつつ、社員相互の自律的な調整を円滑にするためには、社員の感情を含む非公式的なコミュニケーションに気を配ることが求められています。
そのヒントとなる概念は、「指揮」と「統御」です。
「指揮」はいわゆる命令のこと。「統御」は構成員に心理的な働きかけを行い、熱量を高め、感化するリーダーシップのことです。
これもコーディネーションとは無関係に見えて、メンバーが積極的に水平的なコミュニケーションへ臨むために必要な要素です。
理由は、人と人の関係性における「思い」の強さと一致が、特にコーディネーションを要する非定型的な業務の場合に、より時間・空間が離れたチームの推進力になるからです。
したがって個別的な業務のマネジメントから、人と人の関係性のマネジメントに重点を移すことがより大きな課題となってきます。
主体:働き手
下段の階層は、働き手のコミュニケーションというもの自体に対する理解を再度考えることが不可欠です。
パーソル総合研究所が実施した「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」によると、テレワーカーの3分の1超は「上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか」との不安感を持っていることが分かりました(*5)。
これはもっともな不安ですが、冷静に考えれば矛盾した答えです。時間・空間を異にする働き手は、本来自分が何をするか、何をしたかを適切に発信する“義務”があります。
コミュニケーションとは、「見てくれている」と期待することではなく、発信して相手に届けることです。こうした基本のように見えて徹底されていない考え方は再認識しなければなりません。そもそも、「言わなくても正当に扱ってくれる」という人事評価の暗黙の前提は、再考の余地があります。
代替の調整役として、組織上の権限をもつマネジャーではなく、権限はないが組織の横をつなぐ存在を活用することも有用な発想です。
これは伝統的な「マトリクス組織」とは異なります。
マトリクス組織は1960年代以降、複数の企業が導入しましたが、失敗例が多いという印象を拭えません。失敗の要因の一つは、「タテ」と「ヨコ」の双方に組織権限を与えたために、業務上のいざこざだけでなく、政治的な力関係における混乱や無秩序を引き起こしたことにあります(*6)。
これに対して、ここでの「調整役」は、組織権限によらず「ヨコ」の機能を果たすことを期待するのです。そうは言っても、武器なくして組織で動くことはできませんから、権限とは異なるもの、例えば、情報へのアクセス、人脈、専門性など、ほかのパワーの源泉を見出すことがカギになります。
こうした「遊軍」の役割は、現場のマネジャーの裁量で置くこともできる場合があります。
“ディレクション”の視点から考える
働き手同士のコミュニケーションは、目の前にある既存の業務をするためだけにあるわけではありません。
今後より不確実性が高い環境となる中で、組織全体が「次にすべきこと」の手がかりを探索することが重要であり、それは組織におけるコミュニケーションが果たすべき機能です。
インフォメーションの視点や、コーディネーションの視点では、静態的にコミュニケーションの流れを組み立てればある程度解決できますが、探索し発見するコミュニケーションは、より動態的(ダイナミック)であり、もっと空間に依存して行われてきた可能性が高いと考えます。
では結局、「空間に依存している」とはどういうことなのでしょうか。
マネジャーの「かき回す」が重要
それは非言語的な信号によって始まり、維持されるということです。例えば、相手がこちらを見ていることに気づいて会話を始めたり、表情から互いの興味・関心を察して新しい物事が展開したりすることは、誰しも経験があるでしょう。
すなわち、伊丹敬之が
人々がそこに参加し、意識・無意識のうちに相互に観察し、コミュニケーションを行い、相互に理解し、相互に働きかけ合い、相互に心理的刺激をする、その状況の枠組み
伊丹敬之『場の論理とマネジメント』(東洋経済新報社, 2005)pp.103, 152-162
と定義した「場」という概念(*7)は、これに類するものです。
ニューノーマルにおいては、この「空間に依存する」ことなしに、動態的なコミュニケーションを生じさせることが必要になります。
前記の伊丹の概念にヒントを求めると、「場」の生成とかじ取りでは、意図的に「場を設定する」「場をかき回す」という動きと、放置するという意図的な不作為のミックスが必要であると言います(*8)。
時間・空間を異にして働く場合、オフィスで集まるよりも、働き手が孤立するか、あるいは業務で最小限必要なコミュニケーションに留まる可能性は高まります。
その中で動態的なコミュニケーションを作り、維持していくためには、従業員の自発的なやり取りが起こることをただ期待するのではなく、マネジャーが「かき回す」という刺激によって化学反応を起こすことが、これまで以上に大切になります。
「かき回す」とは、働き手がもつ無意識の先行理解に疑問を投げかけることを意味します(*9)。例えば、挑戦的な目標を提示したり、大きな課題テーマを投げかけたりします。これによって、働き手同士のコミュニケーションのきっかけを作り、探索的な新しい相互作用を促進します。
マネジャーの役割は、
- すでに具体的に定まった方向性の下で前進すべく、ヒト・モノ・カネ・情報を動かすこと
- 方向性が定まらずとも、大きな課題意識をメンバーに共有して、話させる、考えさせるということ
です。
リモートワークでは、マネジャーの確固とした戦術に基づき、一人ひとりの職務を定義するという形態もあり得ます。
しかしこれでは、マネジャーの負荷を高め、組織として環境変化に対応する力を低下させる危険すらあります。
そのため、2つ目の役割が大切であり、それこそがコミュニケーションにおけるディレクションの視点となります。
“インスピレーション”の視点から考える
組織における有機的なコミュニケーションにおいて、ディレクションはそのきっかけを与える「起動装置」ですが、それをもとに、創造的なアイデアを生み出すのはマネジャーだけではなく組織の構成員全体です。
次の方向性を形作るような新しい気づきを得るための、インスピレーションを生むコミュニケーションを、ニューノーマルでどう考えればよいでしょうか。
インスピレーションに基づいた新しい働き方
インスピレーションとは、人がもつスキーマ(物事を理解する枠組み)との差異を認識することによる気づきである、と言い換えることができます。
そうしたギャップは様々な手法で認識しうるものですが、他者とのコミュニケーションがその重要な源泉の1つであることに疑いはないでしょう。
実際のところ、異なる時間と空間で働くことは、そうした気づきを得るのに不利であるという主張は真剣に考慮する必要があります。
学術界では古くから国境や時差を超えた共同研究がなされてきましたが、1960年から2020年までの論文を調査した研究は、研究者の物理的な距離が離れるほど、また標準時が異なる方が、破壊的なイノベーションが生れる確率は低下していること、通信手段が発達した2005年から2020年に限っても、特に概念性の高い研究活動ではオンサイトの生産性が高いと指摘します(*10)。
このような背景がある一方で、採用競争や離職防止の観点も考慮し、出社とリモートを組み合わせる「ハイブリッド型」とする企業が多数になると予想されます。日本で働く従業員の50%がハイブリッド型を希望しているとのデータもあります(*11)。
新しい働き方に合った工夫と施策を考える
以下では、ハイブリッド型やリモートワークを前提にしたときの施策を検討することにしましょう。
ハイブリッド型を前提にする場合、オフィスに人が集まるときのコミュニケーションの質を上げていくことを考えていくべきです。
同じ建物や部屋であっても、別のフロアや、部屋の対角線上の向こう側にいる人とは話さないでしょう。
そのため、より意図をもって、空間をデザインすること、特に働き手の「動き」を高めることが大切です。オフィスの滞在時間を増やすだけではなく、異なる人との遭遇や接触を増やす仕掛けによって、貴重なタイミングを有効なものとすることができます(*12)。
またリモートワークでも、勤務地周辺を超えた発見の促進と共有や、社外とのつながりの獲得などが大切です。
オフィスの「内」でも「外」でも、ノンルーティンな刺激を作ること、ノンルーティンなコミュニケーションを生むことが重要です。
完全出社でも「同じ通勤経路、同じ会話」では、インスピレーションへの期待はできません。ましてや、リモートワークのような「朝から晩まで自宅で孤独」では絶望的です。このような視点から、オフィスの内外を見直すことが必要です。
ニューノーマルのイメージである「自律的な働き手の集合」を、インスピレーションの視点を組み入れた構想とするためには、ノンルーティンが生れる仕掛けを組織的に、空間的に作っていくとともに、一人ひとりが新しい発見のために日常を超えた取り組みをする「創造性の自己管理」とでも言うべきものを強調しなければなりません。
例えば、美術館において芸術的な体験をする、地域の新しいコミュニティに参加して自らの感情の動きを生み出す、自室を奇妙な装飾にしてみる(*13)、など様々なアイデアがあり得ます。こうした個人の取り組みに、組織として報償を与えることも選択肢となるでしょう。
ここまでは、インフォメーション、コーディネーション、ディレクション、インスピレーションのそれぞれの視点から考察をしました。
後編では、企業が新たなマネジメントをどう構築するか、そしてマネジャーや人事責任者が考えるべきことを解説します。
参考文献
- Allen, Thomas and Henn, Gunter. 知的創造の現場―プロジェクトハウスが組織と人を変革する. 糀谷利雄, 冨樫経廣訳. ダイヤモンド社, 2008.
原著: Allen, Thomas and Henn, Gunter. The Organization and Architecture of Innovation. London, Routledge, 2007. - Thompson, J. D. Organizations in action: Social science bases of administrative theory. New York, McGraw-Hill, 1967.
- Simon, Herbert A. 経営行動―経営組織における意思決定過程の研究. 二村敏子, 桑田耕太郎, 高尾義明, 西脇暢子, 高柳美香訳. 新版, ダイヤモンド社, 2009, p.292-294.
原著: Simon, Herbert A. Administrative Behavior. 4th ed, New York, Free Press. - 同上, p.124-125.
- 株式会社パーソル総合研究所.“テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査”. https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/telework-anxiety.html , (参照2022-7-29).
- 岸田民樹. 経営組織と環境適応. 三嶺書房, 1985.
- 伊丹敬之. 場の論理とマネジメント. 東洋経済新報社, 2005, p.103,152-162.
- 同上, p.251-254.
- 同上, p.251-254.
- Yiling Lin, Carl Benedikt Frey, Lingfei Wu.“Remote Collaboration Fuses Fewer Breakthrough Ideas”. Cornell University. https://arxiv.org/abs/2206.01878 , (参照2022-7-29).
- リンクトイン・ジャパン株式会社.“コロナ禍を経た日本、在宅と出勤を組み合わせたハイブリッド型勤務を望む人は約半数に~LinkedIn調査「働き方の未来に関する調査:2021版」で明らかに~”. PR TIMES. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000066809.html , (参照2022-7-29).
- 稲水伸行.“No.543 オフィスへの滞在とABW(Activity-Based Working)は クリエイティビティを高めるのか?ビーコンの位置情報に基づく社会ネットワーク分析を用いて”. 東京大学大学院経済学研究科 経営教育研究センター. http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/dp/pdf/MMRC543_2021.pdf , (参照2022-7-29).
- Kaufman, Scott Barry. The Emotions That Make Us More Creative. Harvard Business Review. 2015. https://hbr.org/2015/08/the-emotions-that-make-us-more-creative , (参照2022-7-29).