バブル入社世代の閉塞状況を打開するための方策として、「専門性の活用」に続いて「ジョブローテーション」をとりあげる。ポスト不足により、昇進・昇格などの「縦移動」が難しくなる中、組織の「横移動」として「ジョブローテーション」を活用し、いびつな人員構成で硬直化した組織に動き(ゆらぎ)を与えることが期待される。
多くの日本企業におけるジョブローテーションは、一括採用された新卒社員を定期異動させ、マンネリ化を防ぎ、多様な部門や仕事を経験させるものだ。将来の幹部社員やゼネラリストを育成することを目指している。
社員が様々な部門を動くことで「社内の人脈形成が促進される」「部門間連携がスムーズになる」「異動した社員を多くの社内関係者が見ることで、その社員の人物評価情報が豊富に集められる」といった機能を果たすことが期待された。
ところが経営環境が変化する中、定期異動による一律のジョブローテーションでは結果的に、新たな事業の立ち上げができたり、高い専門性を発揮して組織をけん引できたりする優秀な社員が育たないという状況に直面した。
ジョブローテーションを実施するには均質な能力を備えた社員が一定数おり、誰かを異動させ空いたポジションに他の社員をあてなければならないが、人員削減などで難しくなり、結果的に組織内の動きが減ってしまった。
もはやバブル入社世代を縦方向に動かすことは難しい。しかし、横移動であるジョブローテーションを新たな目的のもとで活用することは可能だ。社員にとって部門や業務の変更は新たな学習機会となる。人手不足の部門や実務経験者が求められる部門に、経験豊富なバブル入社世代を配置することで彼らの業務経験や人脈を生かせる。
ビジネス環境が変化する中で、組織として社員に一律かつ恒久的なキャリアパスを提示することは難しい。ジョブローテーションという横移動を通じて、バブル入社世代に対して自己学習の機会を提供。蓄積した経験や能力を異動先の仕事で新しい価値に転換させる。そうすることで「硬直化した組織」を「学習する組織」に変えることが可能となる。
元の記事は『日経産業新聞 企業力アップ!組織人事マネジメント講座 (全33回連載)』(2014年1月09日~3月27日)に掲載されました。