非正規雇用が増え続けている。総務省の労働力調査によると、非正規労働者の数は1906万人となり、雇用者に占める割合も36、6% と過去最高を記録した(2013年平均)。
正規・非正規を合わせた全体の雇用者数はリーマン・ショック前(07年)の水準から回復しているが、その内訳は大きく変質している。07年との比較でいえば、雇用者数は全体で約20万人増加したが、その内訳は正社員が約150万人減少して、非正規が約170万人増加しているのである。
人材需要が回復したとしても、正社員への道は「狭き門」であり、非正規雇用の増加傾向は今後も続くと予想される。
非正規という雇用形態についた理由を聞くと、男性の30%以上は「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由を上げている(労働力調査)。家計の補助や時間の自由がきくという理由で働く主婦パート等とは、明らかに異なる事情がそこにはある。
「正社員になりたいけど非正規社員から抜け出せない」という閉塞感。この閉塞感の背景には、「1度レールを間違えると競争の入り口にも立てない」「可能性が開かれているように見えて、実は開かれていない」という不可逆で不条理な現実がある。1度、非正規雇用という社会的階層に入ってしまうと、どれだけ意欲が高くても、また正社員と同じような仕事をしているにも関わらず、給与面や成長機会の面で報われない循環に陥るのである。
企業の立場からは、非正規社員の活用をどのように考えるべきなのだろうか
企業にとっては、意欲と能力の高い人により大きな活躍のチャンスを与え、実力と貢献に見合った報酬を得られるようにすることが本来目指す姿である。この原則に立って考えれば、非正規社員の活用にあたって留意すべきポイントは、正しい「機会」と「期待」を創造することである。
今よりも上の活躍の機会、処遇の可能性がないにも関わらず、曖昧な期待を抱かせながら働かせることは、労務リスクの温床となる。また、長く働いて欲しい優秀な人材を本当に見極めたいのであれば、現場の管理職に対する意識付けや明確な評価の基準が必要になるはずである。
元の記事は『日経産業新聞 企業力アップ!組織人事マネジメント講座 (全33回連載)』(2014年1月09日~3月27日)に掲載されました。