縮こまっている管理職に再び「やりがい」を取り戻させるにはどうすればよいか?「組織の階層をつなぎ判断や調整を行うこと」という管理職の本来の役割に立ち返り、「権限」と「責任」のバランスを取り戻すことが必要だ。そのためには、多面的なアプローチが欠かせない。
対策の1つ目として、管理職自身の能力強化は最低限必要となる。管理職自身の判断力や調整力を高めることで、判断や調整に要する負荷を軽減するアプローチだ。しかし、これには一定期間を要する。従来のように「優秀な管理職を時間をかけて育成する」余裕は企業にない。
そこで、管理職としての能力や適性を備えた人材を早期に見抜き、戦略的に仕事の機会を与え、スピーディーに能力開発を進めることが必要だ。昨今、多くの企業で管理職向けの「人材アセスメント」が導入されている。20代の若手社員を対象に、アセスメントを実施する企業も増えている。
対策の2つ目として、管理職だけでなく管理職を支える部下の判断力や調整力を高めることも不可欠だ。部下の習熟度や経験知を高め、管理職が判断すべき業務をある程度委ねるようにし、管理職の負担を軽減するアプローチである。
自律的に判断できる部下を育成することはもちろん、担当業務の組み替えやローテーションを通じて、各メンバーを多能工化しておく(複数の業務に対応できる状態にする) ことが求められる。社内プロジェクトなどに若手社員を早期に抜てきし、疑似的にマネジメント経験を積ませておくことも有効だ。
対策の3つ目として、管理職には最も重要な判断業務や調整業務を任せ、それ以外の機能を他組織が分担することで管理職の負荷を軽減するアプローチが挙げられる。
ある企業では、現場部門に専任の人材育成担当者を配置し、管理職による部下育成機能を組織的にサポートする試みを行っている。ほかにも、管理職をサポートする役割を若手社員に付与し、管理職の負荷軽減と若手社員の育成を同時に進めている企業もある。
これらの多面的なアプローチによって管理職が直面する「責任と権限のアンバランス」を組織的に解消していくことが求められる。
元の記事は『日経産業新聞 企業力アップ!組織人事マネジメント講座 (全33回連載)』(2014年1月09日~3月27日)に掲載されました。