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6章 会社を元気にする「人事部」を実現する①

クレイア・コンサルティング 2018.4.18

1.人事部って、何をするところ?

この章では、組織の中心となって、これまで述べてきた人材マネジメントなどの施策を立案・推進し、組織と個人をつなぐ役割を担う「人事部」に焦点を当て、今後の人事部のあるべき姿について考えてみたいと思います。

そもそも「人事部」が果たすべき役割とは、一体何でしょうか? それは一言でいえば、「人材マネジメントの側面から組織の成長に貢献すること」であるといえるでしょう。もっと簡単にいってしまえば、「社員を元気にさせ、組織を元気にすること」であるといえるでしょう。

では、世の中の組織で、はたしてどれほどの組織が社員を元気にすることに成功しているといえるでしょうか。

いくら社員を元気にさせるための「組織」や「人材マネジメント」の仕組みを理解しても、実際にそれを形にしていく「人事部」が組織の中で有効に機能していなければ、目に見える効果は期待できません。

社員を元気にさせる人事部とはどうあるべきかを、もう一度検討してみましょう。

いままで以上に重くなる責任

みなさんは「人事部」という言葉を聞いて、どのようなイメージを抱くでしょうか。

ある人は「普段の会社生活の中では接する機会も少なく、何をやっているのかよくわからない部署」という印象をもつかもしれません。またある人は、「社員一人ひとりが安心して働けるように見えないところで、いろいろなサポートをしてくれる部署」という印象をもつかもしれません。

みなさんにとっての人事部の印象とは、現在の組織の中で人事部がどのような部署として位置づけられ、実際に人事部の社員が日々どのような仕事を行っているかによって大きく変わってくることでしょう。

それほど、人によって「人事部」に対する印象も変わってくるでしょうし、実際に各企業によって人事部のあり方が異なるのも事実です。

しかしながら、どのような組織であっても、今後、人事部が果たす役割が大きくなることは間違いありません。なぜなら、今後は今まで以上に、組織を構成する個々の力によって、組織の競争力が左右されるからです。

たとえば、「同じ業界に属し、資本力も技術力も社員数もほぼ同程度の2つの企業が、実際の収益力では大きな差を生んでいる」という例は、世の中に数多く見られます。この違いは、まさしく人材の力の違いによるものといえるでしょう。

人事部の役割が拡大

人事部が企業の競争力を生む

実際、「あの会社の社員は非常にチャレンジ精神に富み、新しい事業が次々と立ち上がっている」であるとか、「あの会社には顧客志向の意識が浸透しており、社員一人ひとりがその場その場で自律的に行動している」と形容される企業が、世の中に数多く存在します。

その代表例として、次の2つの企業をあげましょう。

《社員一人ひとりが元気な会社の例》

①サウスウエスト航空
格安運賃や高い稼働率を武器に急成長をとげる同社の最大特徴は、社員一人ひとりが顧客に対する強いホスピタリティの意識をもち、高い顧客満足を実現していることです。「社員が楽しく仕事をすれば顧客も喜び、その結果として会社の利益もあがる」という単純明快な発想が同社の経営方針となっています。

②ノードストローム(小売大手)
米国小売大手のノードストローム社では社員一人ひとりが顧客に対して絶対に「NO」といわない姿勢を貫き、洗練された接客や顧客からの返品要求への完全対応などで「ノードストロームウェイ」と呼ばれる顧客重視のカルチャーを確立しました。同社の社員は、顧客にとって何がベストであるかを常に考え、自らの判断で臨機応変に行動しています。

これらの企業では、商品やサービスそのものよりむしろ、「その会社の風土や社員のワーク・モチベーションの高さ」が他社との差別化を生む競争力の源泉となっています。

これまでの競争優位の源泉だった商品やサービスは、ITの浸透や市場の成熟化によりすぐ他社に真似され、一度確立した競争優位もすぐに陳腐化してしまいます。 一方で、組織を構成する社員によって築き上げられた価値観や風土(いわば「組織のDNA」ともいえるもの)は、他社がいくら懸命になってそれを真似しようとしても、短時間で真似ることは難しく、他社に対する“大きな競争優位”となりうるのです。

自分たちの組織しかもちえない強い「DNA」を築くことが、他の組織との差別化を図るうえでの大きな競争力となります。

そのためには、組織を構成する一人ひとりに継続的な働きかけを継続的に行っていく必要があるのです。 その役割を中心的に担っていくのが、人事部であり、それゆえ、人事部の役割がこれまで以上にますます重要になってきているといえるのです。

※この内容は2003年に書かれたものです。

ホスピタリティ
「手厚くもてなすこと、歓待」の意味。近年サービス業の一部を「ホスピタリティ産業」と捉え、「いかにして顧客の満足を高めるサービスを提供するか」という「ホスピタリティ・マネジメント」の考え方が研究されている。
組織のDNA
人間の細胞に宿るDNAの遺伝子のように、組織の中で脈々と培われ、継承されているその会社独自の価値観や風土を例えた表現。

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