有期労働契約の「5年ルール」の導入で、企業の人事管理はどのように変わっていくのだろうか。
有期労働契約は本来、臨時的・一時的な業務を行わせるための雇用形態である。この原則どおり運用することが合理的な企業、あるいはリスク・コンシャスな企業では、有期労働契約が通算5年を超えないように画一的に運用していくと想定される。
ある大企業の法務担当者に聞くと、雇い止め法理ヘの対応に関しては何年も前から手を打っており、有期労働契約はすべて一律に3年を超えて更新しないルールにしているという(現場からの反発は強いらしいが)。今回の法改正についても「何も運用を変える予定はない」としている。
2つ目のパターンは無期労働契約への転換である。人材の代わりが見つかりにくい中小企業に特に多いパターンと想定される。社員区分は、正社員・有期契約社員・無期契約社員・短時間勤務者(パート・アルバイト)・再雇用嘱託社員、といったように複雑になる。このパターンでは、同じような仕事をしているにもかかわらず給与や労働条件が違うことを説明できるように、規程や基準を見直す必要があるだろう。
3つ目のパターンは正社員化である。恒常的に人材不足の企業やサービス業に特に多いパターンであると想定される。正社員化といっても、典型的な正社員とは異なり、勤務地や職域が限定される「限定正社員」のタイプが多くなるだろう。ユニクロは、国内の店舗で働くパート・アルバイトのうち1万6千人を正社員化すると発表したが、このケースは地域限定社員ヘの転換である。
正社員化を検討する場合には、今の人事管理の枠組みにあてはめたときに、期待される効果が得られるかどうか、予想外の副作用がないかどうかを検証しなければならない。今の人事制度で、地域や職域を限定した働き方や処遇の仕組みを想定していない場合には、正社員化は労務費の増加を招くだけである。
受け皿となる仕組みがすでにある場合には、今いる人材とこれから入ってくる人材との間で、健全な競争や切磋琢磨が起きるような仕掛けを埋め込むことが重要である。
元の記事は『日経産業新聞 企業力アップ!組織人事マネジメント講座 (全33回連載)』(2014年1月09日~3月27日)に掲載されました。