女性社員がキャリアの断絶を免れられたとしても、それだけで女性管理職を増加させるのは難しい。
ポジティブアクション(女性に対する一定の機会の提供などにより、実質的機会均等を実現する施策)の予定がない企業は過半数を超えており、その理由として最も多い回答は「既に女性は十分に活躍していると思うため」である。また、女性管理職がいない、もしくは少ない理由として最も多い回答は「現時点では、必要な知識や経験、判断力を有する女性がいない」となっている(いずれも厚生労働省「機会均等基本調査」平成23年より)。
活躍する女性社員がいるものの、女性管理職になるのに十分な能力を備えていないというのが、この調査結果から見える実情だ。そして、まず手を打つべきなのは、女性社員の質ではなく、候補群の量の向上だ。
総合職・一般職の区分を設けた人事制度を採用している企業において、総合職に占める女性社員の比率はわずか15.2%であり、能力云々の前に、そもそも母集団形成が十分ではない。また、女性社員のうち入社10年後に離職している人材は全体の6割強を占め、男性の2倍以上である。
その結果、入社10年後に係長以上の職位に就く社員のうち、女性の割合はわずか5.2% に縮小してしまう。少ない母集団をなんとか育成し、管理職に導くプロセスが機能していないことが、女性管理職比率の少なさに拍車をかけている。
採用増などで女性社員を増やした上で、次に行うべきが質の向上、女性社員の戦力化である。スピード感を持って対応することが可能なら、ポジティブアクションに取り組むことは有効である。逆差別を生むといった懸念も耳にするが、実は結果(昇進・昇格等) ではなくプロセス(育成支援や環境整備等) に対する施策として打ち出すことで、こうした懸念は回避しやすい。
一方で、仕事のやりがいやおもしろさを感じるためには、仕事の機会を得ることが一番の近道である。優秀者の早期選抜や管理職ポストヘの弾力的登用など、昇進・昇格に関して柔軟な仕組みを持つことが可能であれば、女性社員に限らず、男性社員も含めて意欲・能力の高い人材に機会を与えることができよう。
元の記事は『日経産業新聞 企業力アップ!組織人事マネジメント講座 (全33回連載)』(2014年1月09日~3月27日)に掲載されました。