解決すべき課題
人的資本経営における重要KPIとしての組織風土
経営資本の中でも、人的資本の重要性はこれまで以上に高まっています。「人的資本の獲得」を目的としたM&Aは、労働人口の減少と人材獲得競争の激化を背景に、今後ますます増えていくものと思われます。また、企業価値を示すKPIとして、人的資本の充実度はますます重視されていくものと想定されます。
人材の意識状態は、人的資本の重要な構成要素です。企業理念への共鳴度や事業戦略の理解度は、人材の定着度(離職率)やモチベーションの高さを左右します。また、人材の成長意欲は、組織全体の人材育成効率を左右します。他方、人材の意識状態は、それが集合体となり「組織風土」として相互作用を引き起こします。組織風土は、個々の意識状態よりも複雑です。
M&Aによってガバナンスが変わるとき、人材の意識状態と組織風土も少なからず変化が求められます。人材の意識状態と組織風土を、どうやって望ましい方向に導いていくかということが、PMIにおける重要な課題となります。
M&A効果を左右する組織風土改革シナリオ
M&Aの場面において、対象会社に属する人材の多くは「受け身」にならざるを得ず、M&Aを前向きに捉えることは難しい状況です。M&Aが自分自身にどのような影響があるか、不安や疑念をもって見極めようとします。このような人材の心理状態を踏まえつつ、「守っていくべき組織風土」と「変えていくべき組織風土」を具体的に可視化し、変えていくべき理由を、組織風土を形成する当事者(従業員)の目線で丁寧に語っていくことが求められます。
M&Aによってガバナンスが変わり、経営陣のメンバー(あるいは経営陣の経営方針)が変わるとき、新経営陣(または新経営方針の下での経営陣)が信頼を得ていくためには、組織風土の現状をきめ細やかに把握し、現状の組織風土を構成する従業員たちの意識に効果的に働きかけるような改革シナリオを、慎重に検討することが求められます。
組織風土を「客観視」することが重要
M&Aの場面では、「現状の組織風土」と、その組織風土の形成を(意識的か、無意識的かに関わらず)リードしてきたマネジメント層(管理職)が存在しています。このマネジメント層を巻き込まずに組織風土改革を進めていくことは、現実的ではありません。マネジメント層を巻き込んでいくことが、組織風土改革の第一歩になります。
マネジメント層(多くの人)を巻き込んで、人材の意識あるいは組織風土のような「曖昧なもの」を変えていくためには、それを的確に可視化し、冷静に客観視し、思い込みや「声が大きい人の主張」に左右されない議論や対策立案を行っていくことが重要です。
組織風土の把握は、多くの場合「意識調査(アンケート調査)」によって把握されます。しかし、M&Aの場面では、当事者の不安や疑念、立場の違いによる様々な思惑などがあり、単なる意識調査では、組織風土の的確な可視化が難しい場合もあります。M&Aの背景や当事者が置かれた状況を踏まえて、適切な手法を検討する必要があります。
課題解消のアプローチとクレイアの付加価値
1.意識調査(アンケート調査)だけに頼らない組織風土調査
M&Aの場面では、当事者である人材(従業員)がM&Aに対して様々な思い(多くの場合、不安や疑念)を抱いており、意識調査(アンケート調査)の実施については、コミュニケーションプランの一環として慎重に検討する必要があります。(当事者である従業員の意見に耳を傾ける、という目的としては効果的と考えられます) 組織風土把握のための意識調査(アンケート調査)は、対象者が本音で回答できる環境づくりがあって初めて機能します。
他方、組織風土の分析手段は、意識調査(アンケート調査)に限りません。例えば、これまでの人事評価表の目標設定の内容から、マネジメントコントロールがどのように機能しているかを推し量ることができます。また、評価や昇格、あるいは人事異動や抜擢のされ方からも、組織風土を推し量ることができます。
クレイア・コンサルティングは、組織・人事に特化した経営コンサルティングファームとして、人材や組織風土の状況を、多様な情報・材料から読み解くノウハウを有しており、意識調査(アンケート調査)だけに頼らない、より多面的な組織風土分析が可能です。また、意識調査(アンケート調査)に踏み切る前に、すでにある情報から組織風土の状況を読み解き、どのタイミングで、どのような形式で意識調査に踏み込むべきか、効果的なプランを提示します。
2.新経営陣が目指す組織風土と、現状のギャップを構造的に可視化
組織風土を把握し、効果的な変革プロセスを構築するためには、漠然とした意識調査(アンケート調査)ではなく、M&A後の目指すべき組織風土(To Be)に対する現状把握を行う必要があります。
すなわち、組織風土分析に着手する前に、M&Aの目的や事業戦略に基づいて「目指すべき組織風土」を具体化することが重要です。
クレイア・コンサルティングは、あらゆる業界において、経営・事業戦略に基づく人的資本マネジメントの改革を支援した経験を有しています。業界・事業特性を踏まえつつ、競争戦略の観点から独自の強みを持った組織風土の在り方を、助言いたします。
組織風土は、形としてみることが難しいものです。それだけに、M&Aを契機に集った、出身母体の異なる人材たちが、目指すべき組織風土を具体的に共有できるように、理論的にも感情的にも「腹落ち」する組織風土のあり方を、多数の事例・経験に基づいて提示します。
3.現実的かつ効果的な組織風土改革施策の提言
組織風土改革は、個々の人材の意識改革であり、評価や処遇のようなインセンティブシステムや、教育システムを有効に機能させることが求められます。また、意識改革の内容によっては、多様で複合的な施策を打っていく必要があります。
クレイア・コンサルティングは、PMIフェーズにおける意識統合の経験はもちろん、企業改革や理念浸透の場面での意識改革プロジェクトの経験を多数有しており、「あるべき組織風土と現状の組織風土のギャップ」の状態を踏まえた、個別最適な組織風土改革の施策を提案します。
例えば、意識改革のための評価制度見直しであれば、評価基準の改定にとどまらず、評価者トレーニングや、被評価者向けのトレーニングの開発・トレーナーも行います。また、意識改革のトレーニングであれば、集合型研修だけでなく、現場の改革課題の推進をテーマとしたワークショップの企画・ファシリテートなども、経験豊富なコンサルタントが担当します。
コンサルティングのイメージ・事例
M&Aの状況は千差万別であるため、状況に適した組織風土診断と組織風土改革の進め方をご提案します。ここでは、典型的な進め方をご紹介します。
1.組織風土の予備診断
幅広い対象者に対して意識調査(アンケート調査)を行う前に、既存の情報から、現状の組織風土の状況を読み解きます。例えば、下記のような情報源から、現状の組織の思考・行動特性やマネジメントコントロールの状況を読み解きます。(合併の場面では、合併対象組織の比較も可能です)
組織風土の予備診断の材料(例)
- 経営計画・部門計画・個人目標の連動性
- 人事評価における目標達成度評価の内容
- 人事評価の傾向、人事評価の調整プロセスの状況
- 離職者情報(離職者の特徴分析)
- 人事異動や昇進・昇格の傾向(人材フローの特徴分析) など
2.「目指す組織風土」の具体化
業界特性、事業戦略、M&Aの目的などを踏まえ、「目指す組織風土」の仮説を設定します。
「目指す組織風土」の仮説は、多数の企業改革経験を踏まえ、多面的かつリアリティのある内容であり、当事者にとって「腹落ち」するストーリーとなるように構築します。
また、「目指す組織風土」の仮説をベースに、経営陣との議論を行い、「目指す組織風土」を確定させるとともに、経営陣の間での「目指す組織風土」の認識共有を支援します。
3.組織風土調査の設計・実施・分析
組織風土の課題を可視化するために、意識調査(アンケート調査)を設計・実施します。
意識調査は、スマートフォンでも回答可能なWEBアンケート方式により、回答者の負荷を下げつつ、回答率を高めるような工夫を行います。
また、適格な組織診断を行うために最も重要なことは、「率直な回答を引き出すこと」と「目指す組織風土とのギャップを浮き彫りにすること」です。
率直な回答を引き出すために、設問内容の設計はもちろんのこと、調査に関わるコミュニケーションプラン全体のデザインを行います。例えば、匿名性の高い調査とするために、第三者である弊社が調査事務局を担い、回答社からの質問対応を行うことも可能です。
目指す組織風土とのギャップを浮き彫りにするために、仮説に基づく調査設計を行うとともに、自由記述のテキストマイニング分析や、クラスター分析などの手法を活用し、重要な組織風土課題を深く掘り下げて分析します。
また、分析結果は、管理職を含む幅広いマネジメント層で認識共有できるようにレポート化します。(合併の場面では、合併対象組織の比較も可能です)
4.組織風土改革施策の提案
目指す組織風土と現状のギャップを解消していくための方策を、多方面にわたり提案します。
組織風土改革施策の領域として、「人事処遇制度の改革」「人材育成制度の改革」「人材フローの改革」「業務改革」「マネジメントコントロールの仕組みの改革」などが挙げられます。どの施策においても、クライアント特有の経緯や制約条件をよく理解し、現実的かつ効果的な施策の実行方法まで提案します。
例えば、管理職のマネジメントスタイルの改革を狙いとした施策として、
- 「管理職人材像」を次世代(中堅)社員が考えるワークショップを開催
- 管理職像考えることを通じて、自社のマネジメント課題の本質を理解
- 管理職像を自分たちの言葉で定義することで、参加メンバーを通じての定着を図る
- ワークショップを通じて次世代管理職の一体感・連帯感を醸成
- 社内広報を通じて「マネジメントスタイルが変わっていく」という期待感を醸成
といった一連の改革施策をデザインし、実行をサポートします。