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人材フローマネジメント・人員計画の立案

SUMMARY

中期経営計画を実現するために、必要な人材をどのように確保・育成するかを構想する「中期要員計画づくり」が人事部の重要な役割として求められるようになっています。

単年度ではなく5~10年の長い時間軸で考える必要があること、人材の「量」だけでなく「質」にも着目する必要があること、また人材構成を理想的な状態に近づけていくために時間をかけて変化を埋め込む発想が求められること、などが難しいポイントです。

さらに、M&A・グループ内再編に伴う組織編成の見直しや、業務改革・DXに伴う職務編成の変化は、中期要員計画づくりを複雑にする要因として働きます。人材の「余剰」と「不足」が組織の様々なところで発生し、それまで前提としてきた採用・配置・評価・育成などの人材マネジメントの考え方も見直しを迫られることになります。

クレイア・コンサルティングのアプローチとしては、事業⇒組織⇒仕事⇒人材の順に解像度を上げながら、中期的な時間軸で必要な人材の質・量の変化を見通し、人材フローマネジメントの再点検と具体的な人事施策への落とし込みまでを一貫して支援します。

中期要員計画が絵に描いた餅にならないようにするには、計画策定のプロセスに各事業の責任者クラスを効果的に巻き込み、自部門の人材マネジメントを(人事任せではなく)当事者意識を持って主体的に考えられるようなデータ提供やデータ活用の仕掛けをつくることも大事です。

人材フローマネジメント・人員計画の検討ステップと留意点

5~10年の中長期的な時間軸で人材フロー戦略を考えるときのフレームワークは下図のとおりです。検討のスタートになるのは、「未来の事業はどう変化すると予想されるのか?」「組織編成はどう変わるか?」「仕事のやり方はどう変わるか?」の展望です。

事業-組織-仕事の変化を予想した上で、こうした変化に「人材」をどのように適合させていくべきか、を考えるのが検討の大きな流れです。ただし、事業の展望は不確実性が多く、検討にあたっては複数のシナリオを考えておく必要があります。あり得る複数のシナリオごとに求められる人材の質と量の変化を予測し、5~10年先を見据えて考えたときに人材フロー戦略(採用・配置・評価・報酬・育成・代謝)をどのように変えていく必要があるかを検討していきます。

中長期的な人材フロー戦略のフレームワーク

1.事業-組織-仕事の変化に適合した人材戦略の具体化

事業-組織-仕事の展望から人材戦略を具体化していく上で、ヒントになる手法がバリューチェーン分析です。バリューチェーン分析の切り口にはいくつかの次元があります。

1つ目の切り口は業界バリューチェーン、つまり業界全体の状況の変化や競合各社との違いから、自社の競争優位の源泉がどのように変わっていくかを分析するものです。「川上をおさえる(付加価値の取り込み)」/「川下をおさえる(需要開拓)」/「優良顧客を囲い込む」「飛び地に参入する」などの戦略の方向性を踏まえて、組織として維持・強化または新たに獲得すべきコアコンピタンスを探索・分析します。

事業-組織-仕事の展望から人材戦略を具体化のためのバリューチェーン分析

2つ目の切り口は社内バリューチェーン、つまり組織内の諸機能の連鎖と協業・分業関係がどのように変わっていくかを分析するものです。事業の展望と戦略の変化に応じて、組織のあり方も見直していく必要があります。新たな強みを獲得するためのM&A、戦略事業の重点化に向けた独立部門化/分社化、グループ内再編による特定事業の専門化・高度化、共通業務の効率化に向けたシェアードサービスセンター(SSC)化などが組織戦略の方向として考えられます。

3つ目の切り口は職務レベルでのバリューチェーン、つまり仕事の括り方や編成がどのように変わっていくかを分析するものです。戦略上の要請に基づく組織機能の集約・分化や業務改革・DX化の進展に伴い、職務と人の組み合わせも見直していく必要があります。例えば、これまで一人の人が担ってきた職務範囲が拡大または高度化することになると、職務で要求される視野・思考・行動も変わってきます。人事マネジメントの観点からは、職種区分の考え方、任用・配置政策、人材獲得、キャリア開発政策などについて見直しを迫られる可能性があるということです。

図は、消費財メーカーの事例です。この会社は収益力が強い事業(ブランド)を有していたため、伝統的に商品企画から販売管理までの職種がかなり細分化した編成となっていました。ところが、消費者のニーズの多様化や低価格化など市場環境は変化しており、より効率的で機動的な組織運営に変えていくことが課題となっていました。

また、取引先との折衝や開拓を行う「営業」と販売店の運営管理を支援する「スーパーバイザー(SV)」の役割が曖昧であり、営業が本来担うべき責任の希薄化や非効率が発生していました。さらに、競争優位の鍵となるECや新素材開発などの機能が外部任せになっており、戦略をリードできる技術人材がいないことも課題となっていました。

このような組織課題を解決するため、商品企画~販売管理の職務は守備範囲を拡大する方向で、職務配置・キャリア開発(ローテーション等)のあり方を見直したほか、営業は経営的な企画業務に特化する方向で、他の雇用区分との役割分担やキャリア開発のあり方を見直すことになりました。また、競争優位の鍵となるエキスパートとしての職務を定義し直し、これらの人材が戦略業務に特化できるようにする方向で役割分担やキャリア開発のあり方を見直すことになりました。

市場環境変化対応たのめの機動的な組織運営改変事例

組織や職務の変化を踏まえて、必要な人材の質・量がどのように変わっていくかを分析します。

まず、「なりゆきシナリオ」として、現在の人員構成が中長期的にどのように変化していくかを予測します。シミュレーションにあたって必要な人材フローの前提条件(新卒採用数・中途採用数・配置先・自己都合退職率・昇格率など)については、過去数年間の実績データを参考に設定します。

次に、職種ごと・階層ごとの人材需要の変化とあるべき人材構成を踏まえて考えたときに、中長期的に解決しなければならないギャップ(人材余剰/人材不足)を分析します。

人材フローの前提条件を変えたときに、これらのギャップの解消にどのくらいのインパクトが期待できそうかの分析も行います。例えば、新規採用を停止して自然減に任せるシナリオや、中途採用だけを増やすシナリオ、管理職のポスト数を削減するシナリオなど、複数のシナリオを想定し、有効な打ち手の所在とインパクトを探索的に分析します。

2.人材フローマネジメントの再点検

あるべき人材構成に近づけていくために、人材フローマネジメントの諸要素をどのように見直していくべきかを検討します。人材フローマネジメントの要素には、「採用」「配置」「評価」「報酬」「育成」「代謝」がありますが、中長期的に予測される人材フローのギャップから特に重点を置くポイントを明確にし、具体的な人事施策に展開できるようにすることが重要です。

人材フローマネジメントの重要ポイントを洗い出したら、それぞれのポイントごとに「今どうなっているか」「今後どうなりそうか」「どこをどう変えていくべきか」を掘り下げて分析していきます。例えば、採用が問題となっている場合には、採用パフォーマンスの実態とその背景要因をおさえておくことが重要です。採用活動への投入コスト・工数と採用実績との関係、内定辞退理由、採用候補者の市場価値水準(人材エージェントに情報照会)と自社の提示額とのギャップ、母集団形成から内定までの一連のフローにおけるボトルネック分析など、変化が激しい分野であるがゆえに客観的な情報で正しい問題認識を補うことが重要です。

また、人材リテンションやモチベーションが問題となっている場合には、社員のキャリア志向やモチベーションの特徴など社員意識の現状をデータやファクトでおさえておくことが重要です。社員の感じ方や志向性は一様ではなく、一律の人事マネジメントでは有効に機能しないと考えられます。社員の多様性の「幅」に合わせてフレキシブルな制度・運用の裕度を設計しておくという発想が重要です。

人材フローマネジメントの再点検

3.人事施策への具体化

人材フローマネジメントの見直しのポイントや要件が決まれば、それを実現するための人事施策を具体的に検討していきます。

図は、物流サービス業の事例です。大都市圏では売上が堅調に拡大しており人材の採用・定着が課題であったのに対して、地方拠点では売上が徐々に減少していく見通しであり、中期的には人材余剰が深刻化することが分析によって明らかになりました。

そこで、大都市圏では報酬・待遇面で採用競争力を維持できるようなテコ入れを行った一方で、地方拠点は正社員の採用抑制と正社員以外の雇用多様化、シニアの積極活用などの対策に重点を置くことになりました。また、DXによる業務効率化と省人化を推進するためには、本社機能および専門人材の採用強化が重要課題であると認識され、キャリア体系や評価・報酬の仕組みについても見直しを行うことになりました。

人事マネジメントの課題と人事施策への具体化

4.中期要員計画の策定

上記の人事施策を実行したときに想定される人材フローの変化(採用数や配置先の変化など)を織り込み、中期的な人員動態・人員構成の変化を改めて予測し、中期要員計画策定に反映します。人員構成予測は、会社/事業別・拠点別・職種別・雇用形態別など、属性別に把握できるようにしています。

このシミュレーションシートは、各事業の責任者が経営判断に使えるように(また独自の事情を考慮してカスタマイズできるように)シンプルなつくりで提供します。

中期要員計画の策定のための人員動態予測とシミュレーションシート
中期要員計画の策定のための拠点別人員動態予測とシミュレーションシート
AUTHOR
橋本 卓
橋本 卓 (はしもと たかし)

クレイア・コンサルティング株式会社 執行役員 マネージングディレクター
上智大学法学部卒業

国内シンクタンクにおいて官公庁や公的機関を中心としたコンサルティングに従事後現職。
グループ再編や組織改革の一環としての人事制度構築、組織課題や従業員満足度調査の設計・実施、マネジメントトレーニング/評価者トレーニングの設計・実施、参加型ワークショップを通じた意識改革プロジェクトの設計やファシリテーション等の分野で実績を持つ。

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