ローパフォーマー問題
ローパフォーマーとは一般的に「会社の期待を下回る成果しか創出できず組織の負担となっている従業員」を意味します。組織の中には「ローパフォーマー」が一定数存在します。成績不良を理由に解雇することが難しい日本企業の雇用慣行 やこれから予測されている労働力不足を考えると「ローパフォーマーの再活性化」は重要な課題となります。
しかし、日常的な人事マネジメントの仕組みの中では、一度「ローパフォーマーである」という烙印を押されてしまうと、そこから再活性化させることは難しくなります。組織全体の成果に責任を負う管理職は、ローパフォーマーに重要な仕事や実力以上の仕事を割り当てることを避けるようになり、結果として本人が成長する機会も失われていきます。
加えて、人事評価とフィードバックを通じてローパフォーマーの正しい自己認識と行動改善を促すことにも限界があります。なぜなら、上司は成長ポテンシャルが高く上司の言うことに素直に耳を傾ける部下の指導やフィードバックに、自分の限られた時間やエネルギーを割きたいと考えがちだからです。
このように、日常的な人事マネジメントの仕組みでは、ローパフォーマーを戦力化することは難しいという事情があります。しかし近年、採用環境の変化の中、一定の質を保った人材の確保は益々難しくなり、既存社員の戦略化に力を注がざるを得ない企業も多く、ローパフォーマーの再活性化は人事戦略の一つとして注目すべき課題となっています。
ローパフォーマーの再活性化に向け
ローパフォーマーの再活性化には、まず、本人自身が認識を改めるきっかけを与えることが必要です。
すなわち、自分や周囲の状況を、正しく認識することです。ローパフォーマーは、これまで自分の仕事が評価されない、周囲から半ば無視される、などの経験から「自分が成果を出せないのは自分のせいではなく、会社・上司や顧客のせいだ」「努力しても無意味だ」といったネガティブな思考に陥っており、自分の能力不足や評価が低い原因を正しく認識できていない場合があります。あるいは、「適当に仕事をしていればクビになることはないだろう」「このまま会社にぶら下がっていこう」という依存思考に陥っている可能性もあります。
そこで、「現状はローパフォーマーだが、適切な努力をすることで、能力を向上させることが出来る。能力を向上させないと、今後危機的な状況に陥る可能性がある。」という、正しい現状認識・自己認識を醸成することが必要となります。
ローパフォーマー向けワークショップ
ローパフォーマーはワークショップ を通じ、「現状はローパフォーマーだが、適切な努力をすることで、能力を向上させることが出来る。能力を向上させないと、今後危機的状況に陥る可能性がある。」という、正しい現状認識へ意識を変革することが求められます。
ローパフォーマー向けワークショップとは、本人の努力や上司のマネジメントでは改善が困難な「ローパフォーマー」に対して、意識・行動の変容と改善を促す取り組みです。
ローパフォーマー向けワークショップの機能とメリット
1.ローパフォーマーが認識を改めるきっかけを与える
ローパフォーマーにまず求められるのが、自分や周囲の状況を、正しく認識することです。前述したとおり、ローパフォーマーはネガティブな思考や依存思考に陥っている可能性があります。そのため、ワークショップはその思考、意識を変える有効な機会となります。
2.自律的な問題解決を促す
ローパフォーマーになってしまった原因は、本人の努力や能力の問題だけでなく、複雑で多岐にわたる環境要因が影響している場合もあります。
表面的な対策ではなく、原因を確実に認識し、適切な打ち手を講じることが求められます。他者から原因や解決策を与えられるのではなく、自らの手で問題を特定し、努力すれば実行できる打ち手を考えさせることにより、問題解決の確度を高めていくことが必要です。
ワークショップでは、現状、パフォーマンスが低い原因を自己認識すると同時に、適切な解決手段を取りながら、自律的な問題解決を進められるよう支援します。
3.行動を定着させる
原因や解決手段が判明しても、日々の業務の中で継続的に改善行動を実行しなければ効果は見込めません。しかし、ローパフォーマーはこれまでの習慣に引きずられ、改善の取り組みを徹底・継続できないケースが多くあります。
ワークショップでは、問題解決の方法だけでなく、行動の定着を定期的にチェック・フィードバックする仕組みを同時に取り入れることで、行動を徹底・継続することを支援します。
クレイア・コンサルティングが提供するローパフォーマー向けワークショップの特長
1.客観的な分析・診断を実施し、個に着目した対応を検討
専門のアセッサーによる評価を通じて、行動改善を阻害(促進)する要因と対策を個別に明らかにしていきます。行動改善の阻害(促進)要因となる思考・行動様式に着目し、構造化インタビュー(BEI)を個別に実施します。
アセスメント内の項目については、会社ごとに求められるコンピテンシーを設定します。そして、アセスメントの結果から、対象者ごとの育成課題と対策の方向性を検討します。
2.行動から意識を変える
その会社・職種で求められる望ましい行動の「型」を明らかにし、過去のデータによる反省・検証を通じて、可能な限り測定可能な行動KPIに落とし込みます。
アセスメントを実施したコンサルタントがアセスメント結果をフィードバックし、本人の自立性を尊重しながら客観的な視点で自己変革を促すための面接を実施します。
3.定期レポートの設計と運営
本人の動機付け・PDCA・自己学習を持続的に行わせるための仕組みを検討していきます。ポイントは、行動改善の変化を定期的にデータとして見せることにより、小さな達成感の積み重ねを実感させることです(持続的な動機づけ)。そして、学習教材を使用しながら、改善状況をセルフチェックできるようにすることです。簡易的な筆記試験などを実施する等、強制的に学ぶ環境を作る工夫も行います。
また、反省と検証を徹底的に行うために、行動⇒行動の結果⇒成果の関係を意識させ、定期的に振り返ることによって、正しい根拠に基づいた判断を行うための習慣付けを図っていきます。
ワークショップ実施の流れ
1.対象者に関する情報収集・分析・診断
対象となるローパフォーマーの現状と想定される課題について、客観的なデータを把握します。
1-1.過去の評価実績を収集する
過去の評価データ(評価結果、上司コメント、360度評価 の結果など)を取得します。
1-2.アセスメント診断の設計と実施
各社の人材要件や社員に求める役割の変化に着目し、アセスメント項目を設定します。設計した項目を元に個別にアセスメント診断を実施し、成果が創出できない原因・行動の実践度・過去の成功事例や失敗事例などに関する本人の認識を聞き出します。これによって成果と行動・意識との関連性や、行動改善を阻害する認知的要因などを明らかにします。
2.ワークショップの実施
対象者自らに、自分の課題を把握させ、どのように解決するかの計画の立案とコミットメントを促します。
2-1.目標の設定を促す
アセスメント診断における自己分析を確認し、対象者が自律的に目標を設定します。アセスメントを実施したコンサルタントが、正しい視点から目標を設定できるよう誘導します。
2-2.目標に照らして現状の課題認識を促す
上司や周囲の評価とアセスメント結果をフィードバックすることで、対象者の認識改善を促します。第三者の客観的な診断をフィードバックすることで、対象者が自己の課題を正しく受け止め、改善の必要性を認識するきっかけを与えます。
2-3.課題解決の方法を立案する
現状認識を元に、課題解決の方法を自ら考えさせます。ワークショップの講師から課題解決の方法を指導し、自己の課題に真摯に向き合いながら行動改善に取り組めるよう導きます。
2-4.行動計画と行動KPIを設定する
アセスメント診断によって表面化した課題解決を確実に解決できるよう、「解決策を実行できた/出来なかった」が明確になるような、行動KPI と中長期的な行動計画を設定します。
3.行動を定着させる仕組みの導入
ワークショップの結果が、一時的な改善に陥らないよう、日常の業務で行動し続けるような仕組みを導入します。
3-1.定期レポートの発行
設定した行動KPIの達成率だけでなく、行動を通じて達成した結果(売上高、成約率など)の指標を目に見える形で見せることで、達成感や自己効力感を高め、行動の定着を促します。
3-2.反省と検証を行う機会の設定
定期面談などの機会に行動を振り返り、反省と検証を促します。その際、行動KPIの達成⇒行動の結果⇒成果、という関係を意識させるようなフィードバックができるように、設計します。